11人が死傷した2004年8月の配管破損事故以来、運転を停止していた関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)は10日午後1時に原子炉を起動したが、核分裂反応の制御に使われるホウ素の設定濃度が高すぎたため、予定の午後2時ごろになっても核分裂反応が連鎖的に起こる臨界に達しなかった。
このため、制御棒を抜くなどの作業をやり直し、午後11時37分、予定より約9時間半遅れで臨界に達した。
この影響で、11日夕に予定していた送電開始は遅れる見通し。
関電によると、余分な核分裂反応を抑制するため、中性子の吸収性が高いホウ素を1次系冷却水に混ぜている。今回、臨界に必要なホウ素濃度を高く計算したため、制御棒を抜いていったが臨界に達しなかった。このため、いったん制御棒を戻し、濃度を低くしたうえで、午後10時30分から再度、臨界への操作を実施した。
関電は「昨秋の試験運転で核燃料の組成が変化したのを把握しきれなかった可能性がある」として、調査を進める。
関電では05年11月、美浜原発1号機の定期検査後に再起動する際、ホウ素濃度が高過ぎて臨界に達しなかったことがある。
ある遺族は「動かしてほしくない気持ちを抑えて再起動を了承した。遺族の気持ちに応えるためにも、せめて順調に滑り出してほしかった」と話した。
小出裕章・京都大原子炉実験所助手の話「ホウ素濃度の調節は、イロハのイにあたる基本的な部分で、きっちりと行わなければならない。非常にばかげたミスだ。今回は濃度を高く調整したため安全面の問題はないが、濃度が低ければ反応が進みやすくなり、大変危険だった」