保全処分の申し立ては債権を持つ都市銀行などもできる。ただ、暴力団が絡む場合、立ち退かせるまでの労力や費用の負担が大きく、報復や暴力を恐れて手がつけられていないのが実情だ。
整理回収機構が破綻(はたん)した金融機関などから買い取った債権のうち、暴力団絡みは全国で600件を超す。預金保険機構は「回収困難な不良債権を放置すればバブルの負の遺産が積み上がり、公正な市場を阻害しかねない」と判断。04年11月、回収困難な物件を個別に検討する「フェニックス作戦」を立ち上げた。
今年度からは専従の職員を大幅に拡充し、出向組の警察官が蓄積してきた暴力団情報を活用。保全処分の妥当性を判断するなど、裁判官や国税職員、検事らがそれぞれの専門知識を駆使して物件の洗い直しを進める。
明白な妨害行為は競売入札妨害罪などで立件されることもあるが、民事不介入が原則の警察にとって、債権回収に伴うトラブルを事件化するのは難しい。このため、両機構は債権回収の優先順位を検討する際、近隣住民の不安解消につながるかどうかを重視し、物件の競売を繰り返してきた。
http://www.asahi.com/national/update/0109/OSK200701090100.html