JR福知山線脱線事故で、現場線路上の架線の送電が停止するまで事故発生から50分近くも経過し、救助活動にあたる救急隊員や市民らが1500ボルトの電線に接触して感電する恐れのあったことが、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)の調べでわかった。
JR西日本は先月、事故調が公表した調査報告書で指摘を受け、事故から1年8か月を経てようやく原因調査に乗り出した。
事故調や関係者によると、事故は2005年4月25日午前9時18分、塚口—尼崎駅間の上り線で発生。数分後に、事故車両の車掌から新大阪総合指令所に無線連絡が入り、電気関係を担当する電力指令長の指示で、大阪電力区の社員が同40分ごろ、現場に到着した。
すでに、尼崎市消防局の救急隊員や近くの工場従業員ら数十人が救助活動を行っており、電車の屋根で作業する人もいた。
線路から約5メートル、電車の屋根からなら1メートル〜50センチのところに、電車がパンタグラフを通じて電気を取るトロリ線と、同線に電気を流す電線(いずれも1500ボルト)が張られている。
社員は送電が続いていることに気付き、同59分、同指令所の電力指令員に「一刻も早く停電させてください」と要請。指令員が電力指令長の指示で停電の遠隔操作を完了したのは、上り線が午前10時4分ごろ、下り線はその2分後だった。
JR西のマニュアルでは、送電を停止する場合、駅間で列車を止めると事故につながる恐れがあるため、電力指令員と運行を管理する輸送指令員が打ち合わせたうえで、電力指令長が判断、指示するよう規定。現場の状況を確認する前に、事故発生の一報が入った時点や、周辺を走行中の電車に停車を指示した段階で即、停電させるケースを想定していないという。
今回の事故では、停電要請の36分前に、周辺の電車に停車が指示されていた。
社内調査に対し、電力指令長は「要請後、マニュアル通りに停電を指示した」と説明している。
同社は「事故調の指摘を受けて問題かもしれないという認識を持った。経緯を詳しく調べて対応を考えたい」としている。