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2007年01月05日(金) 00時00分

ぼくらの時代<下> 71−74年生まれ 東京新聞

 受験戦争や就職氷河期を生き抜いてきた1971−74年生まれの世代。頼りなげに見えて、実はしっかりと地に足をつけ、確かな歩みを進めている人たちも多い。淡々としているようでいて、内には熱い気持ちを秘めている。今後、彼ら彼女らが日本の将来像を描く。

■建築家石井ひろみさん(34) 人とのつながりが喜び

 全国各地で地場材を活用した木造学校設計に携わり、個人住宅の建築にも力を入れる。双方をバランスよく手掛けることで、社会と家族、住まいの関係を考えた設計に工夫を重ねる。

 「建築は設計から完成まで携わる人が多く、意見の調整などに苦労が絶えない。その分、完成した喜びを共有できることがうれしい」と話す。

 「最近分かってきた。人とのつながりが喜びなんだなって。若いころは何かを創(つく)る自己表現の部分しか見えてなかったんでしょうね」

 きっかけは高校生の時に見たトレンディードラマ。ヒロインのインテリアプランナーという職業に興味を持ち、大学で住居学を学んだ。「身近で話を聞く開業医のような建築家になろうと思った」

 「私たちの世代は、大勢の中で切磋琢磨(せっさたくま)してきた。個性を出して努力をしないと自己実現できない」。同世代の間で話すと「下の世代はガツガツしてないね」と意見が一致する。「人数が多いせいか、似たもの同士に出会いやすい。ライバルでもあり、気持ちを共有できる。そういう人たちに助けられている」

 夕焼けを見るのが好きだ。一日の終わりの美しさに心が動かされる。「独立前はあまり見なかった。余裕がなかったのかな」。最近は四十代の自分の姿を思い描く。「四十代にはっきりとした自分の輪郭が描けるように、三十代は背伸びもして自分のスタイルをつくっていきたい」 (石井敬)

 一九七二年、千葉県生まれ。ゼネコンなどで十年間の実務経験を経て独立。墨田区で建築事務所を設立。

■フィギュア作家デハラユキノリさん(32)“毒”がなきゃ味気ない

 「粘土遊びの延長なんですが」。アパートで奇抜なフィギュアに囲まれながら照れ笑いする。カツオを抱える漁師の「元吉さん 48歳」や、頭髪が不自由なサラリーマンなど強烈な造形の数々は若い女性をとりこに。

 粘土で一日中でも遊んでいる子どもだった。仮面ライダーを作り、思春期にもこっそり粘土遊びをしていた。「小中学生のころ、ホラーブームだった」。米映画の影響を強く受け、作風も「くどい感じ」。青筋を立てたり傷口を加えるなど“毒”を含ませないと「味気なく感じる」。

 京都市のデザイン会社でイラストレーターをしていたが、上京して独立。地道な営業でイラストの仕事は増えたが「これじゃ会社員と変わらない」と、好きなフィギュアの個展を始めた。

 地場産業に携わる人々をモチーフにした「ジバコレ」や凶悪な野菜を擬人化した「お野菜戦争」。へんてこなキャラクターは広告や雑誌などでひっぱりだこ。「ナイキの広告を手がけたい」という夢も実現した。バブル時代は「(収入が)よかった」と嘆くのを聞くが「(自分たちは)最初から期待していない世代かも」とあっさり。「僕じゃないとできないことを、ちびちび楽しみながらやっていきたい」

 そんな自分の“中身”を問うと、五割以上が「性欲」とうそぶく。「セックスアピールの強いフィギュアは、もっと上手な人たちがいる。作品にダイレクトには出ていませんが、性欲は創作の基本です」

  (中山洋子)

 一九七四年、高知県生まれ。著作にフィギュアを使った絵本「お野菜戦争」(長崎出版)など。

■消費社会研究家三浦展さん ブログじゃ世の中変わらん

 彼らはアンラッキーな世代です。受験戦争は厳しく、バブル崩壊で就職難だった。まじめで堅実で我慢強い。子どものころは、一生懸命やれば報われると育てられて、大人になったらそうでなかった。はしごをはずされたようなもの。今になって、要領よく機を見て敏になんて言われて。

 そんなこと言われても戸惑う。世の中、こつこつやる人も必要なんだから。誰もが起業できるわけではないし。だからね、堂々とこつこつやればいいんだ。その上で自分なりの一人一人に合った人生の計画を立てるべき時代なんだと思う。

 事実上、終身雇用制は崩れている。会社側は新しい雇用制度にすべきだ。四十歳になったら管理職とか決めつけるのではなく、ずっと平社員でいたい人はそれでいいし、出世したい人は出世する。同じ三十五歳でも独身で年収が二百万円でいい人もいれば、妻子がいて一千万円欲しい人もいる。同列にするから三年で辞めてしまう。いろんな正社員がいていい。

 契約型正社員のような制度を考えてもいいと思う。例えば三年契約で働く。その間は会社側はくびにできないし、社員側は辞めることはできない。三年後に契約を更新するか、辞めるかを決める。会社側にとっては人事コストになるし、社員は身分が不安定になる可能性もある。その辺を解決する必要はあるけどね。

 だからこそ、もっと自分たちでこうやりたいと言うべきだ。ブログに書き込んでいても世の中は動かないですよ。世の中を変えるのは法律。つまり政治だ。今、普通の若い人たちの声が少ない。そういう人たちの声を集めることが必要では。サイトをつくってもいい。同世代でもっと声を上げようよ。そうすれば世の中、動かざるを得なくなりますよ。 (談)

 一九五八年生まれ。消費社会研究家。カルチャースタディーズ研究所代表。著書に「下流社会」「難民世代」など。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20070105/mng_____thatu___000.shtml