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バグダッドのイラク高等法廷で06年11月5日、死刑判決を受けたサダム・フセイン元大統領=AP
法廷で反論するフセイン元大統領=06年1月29日、AP
フセイン元大統領(1997年当時)=AP
刑執行はイラク時間30日午前6時(日本時間同正午)ごろ、バグダッド北部にある司法省関連施設内で、政府幹部らが立ち会って行われた。イラク国営テレビ局は執行前後の数分間の録画を無音で放映。元大統領が黒い上下服姿で、抵抗することなくロープに首を通される様子や、執行後に横たえられた遺体の顔などが映された。
幹部らが報道機関に語った話によると、元大統領はイスラム教の聖典コーランを持って刑に臨んだ。目隠しは拒み、執行直前に「神は偉大なり。国家は勝利に満ち、パレスチナはアラブのものだ」と叫んだという。
執行後、マリキ首相は国民向けに声明を発表。「独裁への回帰の道は絶たれた」「暗い歴史に終止符を打ち、イラク建設に前進しよう」と表明し、旧政権を支えたイスラム教スンニ派も積極参加して国民統合を進めるよう求めた。
同国は30日からイスラム教の祝日「犠牲祭」の期間に入ったため、執行は宗教感情を傷つける恐れも指摘された。だが、マリキ首相は29日深夜の緊急閣議を経て執行を命じた。迅速な執行で、政府の威信を国民に示すとともに、スンニ派抵抗勢力に早期停戦を促す意図があったとみられる。
ともに死刑が確定しているイブラヒム元大統領顧問、バンダル元革命裁判所長官については、祝日期間が明ける約1週間後に処刑される見通し。
元大統領の遺体の扱いは未定。ロイター通信によると、北部の故郷ティクリートの知事が地元での埋葬を政府に交渉しているほか、ヨルダン在住の元大統領の長女ラガドさんはイエメンでの埋葬を望んでいるという。
元大統領らは、82年に中部ドゥジャイル村のシーア派住民148人を虐殺したことで「人道に対する罪」に問われた。一審にあたる高等法廷は、1年余の審理を経て11月5日に死刑を言い渡した。控訴院は12月26日に支持する決定を出した。
審理の手続きをめぐっては、「法廷の公正さに多くの懸念がある」(アーバー国連人権高等弁務官)との国際批判も多かった。また、元大統領には、ほかにもクルド人虐殺や化学兵器使用など多くの罪状があったが、未解明に終わった。