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社長が被害者に手渡した借用書の写し。借り主の名前は、社長の個人名や会社名になっていた
「銀行の利子は低い。預けてくれれば、もっといい利子をつけますよ」と持ちかけられた。
東京都港区の福祉関連会社の女性社長(55)。後に聴覚障害者ばかりに同様の勧誘をし、警視庁から出資法違反容疑などで家宅捜索を受けることになる人物だ。
女性が社長に好印象を持ったのは、手話で語りかけてくれたからだ。社長は、兄が聴覚障害者で、手話を幼少時代に身につけた、と話した。
月0.5〜0.6%という利息表を示し、手のひらを上にした両手を胸の前で下げるしぐさ(安心してください)をして、笑顔で語りかけた。
信用して400万円を預けた。翌日、不安になって社長に返金を求めたが、突っぱねられた。
年の瀬を迎えた今も返してもらえない。「いい人かと思ったのに」と、後悔の念は募る。
この社長に対する聴覚障害者からの被害の訴えは後をたたない。6人から詐欺容疑での告訴を受けた山梨県警は12月、警視庁と合同捜査本部を立ち上げた。これまでの調べで、被害者は十数都県に250人、総額22億円になるとみられる。
弁護団の一人で、聴覚障害がある田門浩(たもん・ひろし)弁護士は「手話で心をつかんだことが大きい」と言う。全日本聾唖(ろうあ)連盟の久松三二(みつじ)本部事務所長も「常に情報不足の中で、とりわけ今回は女性社長の話術が巧みだったことが被害拡大につながったのではないか」と話す。同連盟は9月、社長の勧誘について「ろう者をねらう犯罪許さず」と機関紙で声明を発表し、注意を呼びかけている。
社長は6月、朝日新聞社の取材に「障害のある人は詐欺にかかりやすいので私が守って、財産を少しでも増やしてあげたいと思った」と弁明した。社長は神奈川県湯河原町で運営していた老人保健施設の経営が行き詰まり、10月に破産した。
山梨県の60代の女性は、障害基礎年金など20年以上かけて蓄えた1100万円を昨年9月に社長に預けた。携帯電話のメールで数十回、「生活費が苦しい。返して」と送信したが、「おとなしく待ってて下さい!」の返事ばかりが来た。
自宅のリフォーム費用に充てるつもりだった。ほかにあてもなく、ストレスから通院している。女性は言う。
「手話ができる人が信じられなくなった。そんな自分がつらい」