2006年12月29日(金) 08時01分
台湾地震 有線…ネット社会のもろさ(産経新聞)
【シンガポール=藤本欣也】26日に台湾南部沖で発生した大型地震は、アジアの南北を結ぶ海底ケーブルなどを損傷させ、東アジアや東南アジア各国でインターネットや国際電話が一時不通になるなどの二次被害が広がっている。スマトラ沖地震とインド洋大津波からちょうど2年目に起きた地震は、インターネット社会のもろさと弱点をさらけ出した。
「今回、アジアを襲ったのはデジタル時代に対するツナミだった」。28日付の国際紙、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンはこう評した。確かに、台湾で起きた地震による通信障害は日本、韓国、中国本土、香港、シンガポール、フィリピン、マレーシア、タイなど各国に、まるで津波が押し寄せるように広がっていった。 韓国では、海底ケーブルの損傷により、通信最大手、KTの顧客32社がインターネットや国際電話が一時つながらないなどの被害を受けた。大半が金融機関だったが、政府の中枢である外交通商省にも影響が広がり、関係者を慌てさせた。
香港では、固定通信最大手のPCCWのデータ通信の容量が一時50%まで低下。特別行政区政府は28日、「緊急でない国際電話や不必要なインターネットは利用しない」ことを住民に求める緊急声明を発表した。香港国際空港の台湾系航空会社のカウンターでは、コンピューターのシステム障害を併発し、100人以上の行列ができるなど混乱が続いた。
中国本土でも北京などでインターネットや国際電話が通じにくくなるなどの被害が出たが、ロイター通信によると、中国政府は「海底ケーブルの通信情報は国家機密に属する」(通信当局)として詳細を明らかにしていない。
シンガポールでは、政府が「金融や株式市場に混乱は起きていない」と表明しているものの、「インターネットがつながりにくいため、トレーダーらの情報が制限されたり、アクセス可能なパソコンで株価を自由にチェックできなかったりするなど、目に見えない影響は計り知れない」(市場関係者)。海外にいる顧客と連絡が取れず、取引できなかったケースも少なくないという。
また、シンガポールのある日系企業関係者は、「メールの送受信に支障が出るなどで仕事が進まず、開店休業状態。ビジネスがインターネットに支えられていることを思い知らされた」と話す。
28日付の米紙、ウォールストリート・ジャーナル・アジア版は「世界有数の地震地帯でありながら海底に脆弱(ぜいじゃく)なケーブルが走り、また、急速に経済成長を続ける地域ゆえに情報通信の需要が増え続けているアジアで、危険が高まっている」と警鐘を鳴らしている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061229-00000002-san-int