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阪神大震災で全半壊した兵庫県内の172カ所の分譲マンションのうち、当時のまま唯一残っていた兵庫県宝塚市の宝塚第三コーポラス(131戸)が11月末、ようやく再建に向けて動き出した。再建か補修かをめぐって住民は対立し、訴訟にまで発展。建物は取り戻せても人は散り散りになり、戻る者はほとんどいない見込みだ。
11月26日、宝塚市内であった管理組合の集会に久しぶりに住民たちが集まった。区分所有権を持つ120人のうち、委任状を含め賛成94人、反対5人、棄権21人で再建方針が決定した。再建の新計画を練っている山口正治理事長(47)は「再びスタートラインに立てた。やり遂げたい」。
阪神競馬場の近くにある宝塚第三コーポラスは5階建て。強い揺れで骨組みや壁に亀裂が入り、半壊判定を受けた。
管理組合は97年11月に再建を決議。土地部分を県住宅供給公社が一戸平均580万円で買い上げ、再建後に再分譲する手順も決めた。
だが「補修で十分」と考えた住民2人が、決議無効を求めて提訴。04年4月に大阪高裁が決議有効の判決を出して確定したが、土地の買い取り価格は地価下落で160万円になっていた。
一部の所有権は不動産業者に渡り、業者は管理組合に「500万円で買い取ってほしい」と要求して協議は頓挫。朽ち果てるに任せようという雰囲気も広がったが、山口理事長が「マンションがある限り、我々は被災者のままだ」と改めて11月の会議を呼びかけた。
12年たって法律が変わり、再建決議があれば、反対者に売り渡しを求めることができるようになった。だが、決議には区分所有者の5分の4以上の賛成が必要で、11月の94人ではわずかに足りない。棄権に回った21人の納得する買値が新計画でつかなければ、また壁にぶつかりかねない。
震災直後は部屋に閉じこめられた住民を皆で助け出し、死者がなかったことを喜びあった。だがその後5人が亡くなり、みな散り散りになった。この間、各所有者には年10万円近い固定資産税が請求されてきた。いまも1人が住むが、廃虚化が進み治安が心配だと、周囲の苦情もある。
マンションが再建されても、ほとんどの住民は公社に権利を売るだけとみられる。兵庫県三木市に家を購入した山口理事長は「最初は仮住まいでも12年もたてばそっちが本当の住まい。元の暮らしは戻ってこない」と話している。