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請求する人件費は、対応した時間と、かかわった社員、警備員、パートそれぞれの時給を掛けて算出する。時間は警備員が万引犯を不審に思い、監視し始めてから警察に犯人を引き渡すまで、または被害届の提出まで。警察署で調書を作成すると、五時間以上の拘束になる場合も。請求額の平均は約六千六十円。万引した商品は、買い取りさせず返品させているので、請求額には含まない。
損害賠償の請求は、店内にポスターを掲示して告知している。万引が起きてから一週間以内に、請求書を本人か保護者あてに発送する。払われなければ、簡易書留、内容証明郵便と、段階的に証明力を増す様式で、計四回請求する。一回目の請求で振り込まれたケースが68%。請求書が届いているのに入金しない人は3%しかいなかった。昨年八月から今年九月までに延べ六十一人に請求し、計約二十八万円が振り込まれた。
制度を考案したのは加藤和裕社長。一昨年末、東京都の書店が、書籍の万引で有罪になった会社員女性を相手取った訴訟にヒントを得た。この訴訟では、女性が書店側に、監視のために増員した店員の日当と、警察の事情聴取に充てられた店員の時給を支払う画期的な和解が成立した。
「何度も繰り返し万引をして捕まっても、ほとんどの場合、最後の一回だけしか問題にされないし、商品を返して謝っておしまいになってしまう。“盗み得”は許したくない」と加藤社長は話す。
万引は安易に行われがちだが、窃盗罪となる犯罪だ。従来は懲役刑しかなかったため、起訴猶予などになる場合が多かったが、今年四月の刑法改正で、窃盗罪に罰金刑が加えられた。成人の万引の増加が社会問題化。お金があるのに盗むケースが増えている。
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書店の万引は、中古本を売買するチェーン店が増え、新刊のコミックや写真集を盗んで換金目的でチェーン店に持ち込む手口が激増した。福岡県の書店では販売の際、販売証明シールを書籍に張り、中古本店がシールのない書籍の買い取りを拒否する取り組みも始まっている。
経済産業省が二〇〇二年に、全国の書店約五百店に行ったアンケートによると、書店一店あたりの万引被害は年間約二百十万円に上る。会計せずに出入り口を通るとブザーが鳴るタグの導入、防犯カメラの設置など防犯費用は高額だ。しかも万引被害を警察に届け出れば、調書作成に長時間店員が拘束される。逃げる犯人を追いかけて店員がけがをすることもある。
三洋堂書店全店舗で捕まえた万引犯は〇四年四−九月が七十五人だったが、制度を導入した〇五年同期は四十六人、〇六年同期は三十八人と減少。年度末の予定在庫の(万引などによる)不足分を一年の売り上げで割ったロス率も減っている。
盗犯に詳しい愛知県警の捜査幹部は「債権者である書店が人件費を請求することには問題がない。脅迫めいた請求にならないよう、手段や方法に十分注意することが必要」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061226/ftu_____kur_____000.shtml