2006年12月20日(水) 15時06分
<長周期地震動>都が庁舎データ拒否 学会からの提供要請に(毎日新聞)
巨大地震によって発生する「長周期地震動」が超高層ビルに与える影響を検討するため、土木学会と日本建築学会の検討会が東京都に都庁第1本庁舎(48階、高さ243メートル)に関するデータの提供を求めたところ、公開を拒否されていたことが分かった。民間ビルの協力も得られず、検討会は仮想のビルによるシミュレーションしかできなかった。都内の防災に責任を持つ都の“後ろ向き”な姿勢に、専門家から批判の声が上がっている。
長周期地震動はカタカタと揺れる通常の揺れと違い、周期の長いゆっくりとした揺れ。今後予想される東海、東南海、南海地震によって東京、名古屋、大阪の3大都市が強い長周期地震動に襲われ、超高層ビルなどに被害が出ることが懸念されている。
このため、両学会は03年、合同で対策の検討に着手した。メンバーの西川孝夫・首都大学東京名誉教授(建築構造学)は、実在の超高層ビルのデータを基に長周期地震動の影響を解析することを計画。90年12月の完成当時は日本一の高さで、安全性確認のため計8カ所に地震計が設置されている都庁第1本庁舎に注目した。
西川名誉教授は04〜05年、都に長周期地震動の影響を解析して結果を公開することを要望。新潟県中越地震(04年)によって発生した長周期地震動の影響で、都庁内のエレベーターが停止して乗客の閉じ込め事故があったことから、地震計が記録した当時のデータの提供も求めた。
ところが、都はこれに対し、庁舎は国土交通相の許可を受けて建設していることを理由に「新たな解析は必要がない」と拒否。地震計データも「ただ不安をあおるだけになる」として提供しなかった。
西川名誉教授は「実際の建物で安全率がどのくらいあるかを検証したかった。都の幹部は、問題点が指摘されれば困ると思ったのではないか。超高層ビルは倒壊すれば多大な迷惑を及ぼすという意味でも公共性の高い建物であり、情報を公開しないのは無責任だ」と批判する。
伊藤勝春・都庁舎管理課長は「地震計は保守管理をしていないため、使えるデータではないという事情もある。使うには地震計の更新が必要だが、かなり先の地震に備えた学術的な研究のために緊急に整備すべきだとは思わない」と説明している。【中村牧生】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061220-00000076-mai-soci