2006年12月19日(火) 08時33分
日興が書類改竄 不適正な利益 未発行社債で140億円(フジサンケイ ビジネスアイ)
■「会計上の判断は適正」
日興コーディアルグループは18日、杉岡廣昭副社長が会見し、子会社の自己資金投資案件にからんだ社債発行で、「発行関連書類の改竄(かいざん)により不適正な利益計上が行われた」として、2005年3月期および06年3月期の有価証券報告書を訂正すると発表した。訂正は今後、契約先のみすず監査法人の監査を受けたうえで実施するが、日興の概算では05年3月期の最終利益は469億3500万円から351億3700万円に下方修正する方向。
04年に日興の投資子会社、日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)が、特定目的会社(SPC)を通じて東証1部上場の「ベルシステム24」を買収する際、SPCが買収資金の調達のため、ベル社株と交換できる社債を投資子会社に発行する課程で不正が行われた。
当時、社債はSPCの取締役会が8月4日に発行を決議したものの、発行期日の記載漏れなどで必要要件に不備があり、実際には発行されなかった。
ところが、関連書類を作成した担当社員が、記載漏れの事実を隠すため、9月の半ばに日付を改竄した書類で発行手続きを完了し、あたかも8月4日の決議で社債が発行されたように見せかけていたという。社債はベル社株の株価変動に価値が連動する仕組みで、発行時期によって社債を引き受けた連結対象の投資子会社の損益は大きく変わる。
このため、日興は本来、社債発行に伴う利益は約100億円だったものが、実際には発行されていない社債で評価益140億円が日興の連結業績に反映されていたとして、改めてSPCまでを連結対象とし有価証券報告書を訂正するとした。
一方、今回の訂正はあくまで書類の改竄という手続き上の不正に伴うもので、「投資子会社とSPC間の社債取引や、SPCを連結対象外としていた当時の会計上の判断そのものは適正だった」(森田收・財務部門執行役)と強調した。
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【視点】
■あいまいな経営責任/容易ではない信頼回復
日興コーディアルグループは18日、投資子会社の不適切な利益計上に関し、金子昌資会長、有村純一社長ら経営首脳の役員報酬の減額、当該子会社の担当役員の取締役辞任などの社内処分を発表した。ただ、株式市場のプロ中のプロの大手証券会社でありながら、社債発行に伴う一社員の不正を見逃していた内部管理体制の不備は重大で、市場の信頼を取り戻すのは容易ではなさそうだ。
日興は、証券取引法に基づく課徴金が課された場合には、処分の対象とした経営首脳が「分担して自腹で全額を支払う」(杉岡廣昭副社長)と表明。この問題での会社への損失を経営陣自らが負うことで、株主からの批判に応える姿勢を示した。
しかし、同日示された処分は必ずしも十分な内容とはいえない面もある。経営陣の報酬は、業績連動で利益が拡大すれば報酬も増える仕組み。だが、不適切な利益計上で過去に受け取った役員報酬については「さかのぼって見直す考えはない」としている。
また、当該投資子会社の最高責任者である平野博文会長は、経営管理責任をとってグループの取締役を辞任するとしながら、子会社の会長職に引き続きとどまることが認められた。これでは投資子会社の経営体制の実体は、社内処分後も変わらないかたちで、管理責任の取り方としては疑問が残る。社員の不正を会計上の問題点とする日興の主張に対し、証券取引等監視委員会は、そもそも投資子会社とSPC間の取引利益の計上自体を問題視しており、日興が信頼を回復するには、今後追加的な対応を求められる可能性もありそうだ。(池田昇)
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≪五味金融庁長官「大変残念」≫
五味広文金融庁長官は18日の記者会見で、日興コーディアルグループが不適切な会計処理をしていたとして、証券取引等監視委員会が5億円の課徴金納付命令を出すよう同庁に勧告したことについて「市場の信認を確保する意味で大変、残念な事態だ」と述べた。投資家の重要な判断材料となる有価証券報告書に虚偽の内容を記載していたことに対し、遺憾の意を示したものだ。
五味長官はその上で「再発防止策を講じてほしい」として、投資家の信頼確保に努めることを求めた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061219-00000003-fsi-bus_all