2006年12月18日(月) 21時03分
<虚偽記載>日興に課徴金5億円 金融庁に証券監視委が勧告(毎日新聞)
証券取引等監視委員会は18日、日興コーディアルグループ(東京都中央区)の提出書類に虚偽があったとして、証券取引法違反(有価証券届け出書等の虚偽記載)の疑いで5億円の課徴金を科すよう金融庁に勧告した。グループも同日、事実関係を認めて有価証券報告書を訂正。担当の平野博文取締役の辞任と有村純一社長、金子昌資会長ら6役員の報酬を半年間、30〜50%減額する処分を発表した。金融庁は年内にも課徴金納付を命じる方針。グループは役員らが個人で課徴金を負担する。
証券監視委によると、日興は05年11月9日、経常利益を約187億4800万円水増しするなどした「発行登録追補書類」を関東財務局に提出した疑い。同書類に基づく社債発行で500億円を調達しており、調達額の1%と定めた証取法に基づき課徴金を算定した。
違法と認定されたのは「NPIホールディングス」(NPIH)を連結決算から外した経理操作。証券監視委は、完全子会社「日興プリンシパル・インベストメンツ」(NPI)が100%の株式を握っていることから連結対象と認定した。そのうえで、NPIがNPIHから金融取引で約187億4800万円の利益を得たと計上したが、連結対象であるNPIHに同額分の評価損を計上しなければならず、グループ全体では利益がゼロになると判断した。
グループの杉岡広昭副社長らは会見し、「株主や投資家に多大な迷惑をかけた」と謝罪した。
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東京証券取引所は18日、上場廃止基準に抵触する可能性があるとして調査を開始し、株式を投資家に注意喚起する「監理ポスト」に割り当てた。【堀文彦、川口雅浩】
◇課徴金制度…不正行為の抑止狙う
05年4月に導入された証券取引法の課徴金制度は、インサイダー取引や有価証券報告書の虚偽記載などの違法行為に対し、悪質性の度合いなどから刑事告発には至らない場合も課徴金を科すことができる。金融庁と証券取引等監視委員会は、違法行為に対してきめ細かく摘発を繰り返すことで市場参加者をけん制し、不正行為を抑止することを目指しており、今後も積極的に勧告・命令を発動していく考えだ。
課徴金の対象になるのは、05年4月以降に提出された有価証券届出書と同年12月以降提出された有価証券報告書の虚偽記載。日興コーディアルグループは05年11月、利益を水増しした虚偽の同届出書を関東財務局に提出したうえで、一般投資家から500億円を調達しており、金融庁は「市場仲介者としてより高い倫理が求められるのに、自ら重大な虚偽開示をしていた」(幹部)と厳しい視線を注いでいる。
政府はインサイダー取引や虚偽記載に対し、刑事罰の強化などを段階的に行ってきた。しかし、多くの疑わしい案件が「刑事事件での立証が困難」などとして不問に付されてきたのが現実で、このことがライブドア事件などマネーゲームの暴走を許したとの批判もある。金融庁首脳は「ルール違反を犯せば、結局は市場の評価にはね返るということを認識すべきだ」と、新たな行政手法の効果に期待を寄せている。【坂井隆之】
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