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講師から補習授業を受ける大学生=大阪府寝屋川市の摂南大学工学部教育センターで |
高校で習う学習内容の補習を教育プログラムに採り入れる大学が全国的に増えている。入試科目の減少や受験生の「学力低下」などを背景に90年代から広がり始め、現在では全大学の約2割を占める。加えて必修科目の履修漏れが相次いで発覚し、大阪大(大阪府吹田市)も来年度から、高校の教科書を使った世界史の授業を始める。
大阪大の授業は、高校世界史の内容を十分に理解していない学生を主な対象にした「市民のためのアジア史」「市民のためのヨーロッパ史」。高校の教科書を使い、一般教養課程の正規科目として、半年間で各2単位を認定する。
大阪大大学院文学研究科の桃木至朗教授(東洋史学)らが9月に設置を提案した。履修漏れ問題が発覚する前だったが、高校で世界史が十分に教えられていないことは、高校の歴史教員らとつくる研究会などで以前から聞かされていたという。「第2次世界大戦についてほとんど知らない学生、黄河も揚子江も知らずに平気で中国史の授業に出る学生がいる。これでは社会に出て困ることになる」
摂南大(同府寝屋川市)では、工学部の教育センター学習支援室が04年度から補習授業をしている。非常勤を含めた講師9人が高校レベルの数学、物理、情報処理、英語をほぼ1対1で教える。「高校のおさらい」の位置づけで、単位認定はしていない。
同支援室を担当する井上雅彦教授は「入試に必要ない科目は勉強していなかったり、勉強していても十分に理解していなかったりするケースが多かった。補習の効果は大きい」と話す。
文部科学省によると、単位認定を伴わない補習授業をしている大学は、統計を取り始めた96年度は52大学だったが、98年度には105大学に倍増。現在は159大学と、国公立を含めた全大学の2割を超える。
琉球大では、理系学部で数学と物理、化学について高校レベルを含む入門クラスを用意。私立の関東学院大では、工学部で数学などの基礎科目を重視したカリキュラムをつくり、「学生支援室」も置いた。「補習の時間を設けていなくても日々の授業で高校の学習内容を補わざるを得ない」という大学関係者も多い。
東北大学の荒井克弘副学長は「学生の知識不足は、ゆとり教育が導入された約20年前に始まった。能力が低下したのではなく、小中高での学習範囲が狭まったせいだ」と指摘する。
推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試など、一般入試以外の方法で入学する学生の増加も要因の一つとされる。06年度には全私大の入学者の49%に達し、入学者の学力レベルが一定とは言えなくなっている。これに高校の履修漏れ問題が拍車をかけた形だ。
大学での補習教育のあり方などを考えようと、昨春発足した日本リメディアル教育学会の小野博会長は「学力不足の学生を『切り捨て』ては大学運営は成り立たない。入学させた以上、リメディアル(補習)教育は大学の使命でもある」と話している。