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判決は、「ウィニーの技術自体は有意義で、価値は中立的」と述べ、著作権侵害に悪用されなければ、社会に貢献するソフトとなる可能性を秘めていたと積極的に評価した。
しかし、元東大助手の金子勇被告が開発したウィニーが流通した結果は、あまりに破壊的だった。
何者かがウィニーに取り付くウイルスを開発してネット上に流したため、ウィニーを組み込んだパソコンから、個人情報や企業秘密が流出する事件が続き、情報流出の被害は警察、陸海空自衛隊、原子力発電所、学校など広範囲に広がった。
著作権侵害の損失も膨大という。著作権団体の調査では、ウィニーを通じてネット上でやりとりする音楽や映像、ゲームなどの違法ソフトを商品換算すると、わずか六時間の間に約百億円相当にのぼった。
公判で金子被告は、著作権侵害の意図を否定し、「ウィニー開発はデジタル時代の著作権のあり方を探るための研究が目的だった」と無罪を主張している。
弁護団も「車の速度違反が多いからといって、車の開発者をただちに罪に問うのはおかしいのと同様に、ソフト開発者に罪があるわけではない」と述べた。
しかし判決は、「被告はウィニーをホームページ上に公開し、悪用者の著作権法違反を容易にし、犯行をほう助した」と認定。被告弁護団の主張も考慮したうえで、ソフト開発の自由と社会秩序のバランスを視野に入れ、社会秩序の方を重視する立場を取った判決といえる。
だが、デジタル技術が急速に進歩する中で、現状の著作権保護のあり方に再検討の必要性を訴える被告の主張には十分耳を傾ける価値があるのではないか。
ネット上で著作権料の徴収を確実にし映像や音楽を安価に利用できる新しい制度ができれば、愛好者と著作権者双方の利益を増進する。
ウィニーは、特定のサーバー(通信用コンピューター)に依存せず、システム障害に強い利点を持っている。類似の仕組みを利用したインターネットの無料電話は、世界中で利用されている。
控訴審では、検察・弁護双方の主張を通し、デジタル時代にふさわしいソフト開発のあり方を示す結論が得られることを期待したい。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sha/20061214/col_____sha_____003.shtml