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2006年12月14日(木) 00時00分

医療保険 トラブル急増 東京新聞

 生命保険会社や損害保険会社が扱っている医療保険について、国民生活センターは「消費者が思っている保障の内容と実際に保障される内容に大きな『ずれ』がある」とする調査をまとめた。このことが原因になっているトラブルが急増していることも指摘。保険業界に対して、ずれを縮小させていくための対応策を求めた。 (白井康彦)

 医療費の自己負担分を補てんするのが民間の医療保険。定期保険や終身保険などに医療保障が特約で付いている医療特約も含めて、同センターは問題点を指摘した。

 治療法が消費者の期待に反して医療保険の対象になっていないことが原因のトラブルは多い。センターは次のような事例を挙げる。

 七十歳代の男性Aさんは約二十五年前に医療特約の付いた生命保険に加入。前立腺がんを患って今年、病院で放射線源を患部に挿入する小線源療法を受けたので、保険会社に手術給付金を請求した。ところが、保険会社は「加入時の約款で支払い対象の治療法とされていなかった」として、給付金の支払いを拒んだ。

 小線源療法は日本では三年前に導入された新しい治療法だが効果は認められており、健康保険の対象にもなっている。それでもAさんのクレームは受け入れられない。

 同センターは「現在よく行われている治療法でも『加入時点の約款に挙げられていなかった』という理由で医療保険の給付が受けられないことは多い。こうした治療法でも保障されていると信じている消費者が多いので、苦情につながっている」と説明する。

 保険会社が社内規定を根拠に医療保険の給付を拒むことも多い。同センターは次のような事例を挙げる。

 四十歳代の男性Bさんが医療特約付きのこども保険に加入した。入院して五日目から入院給付金が出る契約だった。その後、Bさんの子供が膠原(こうげん)病の治療のため約二カ月間入院。退院から一カ月以上たってからも二、三日間の短期の再入院を数回繰り返した。

 約款には「会社が認めたときは最初の入院と再入院とを継続した一回の入院とみなす」といった文言があり、Bさんは再入院分の給付金も期待した。しかし、保険会社は拒否。その理由の一つとして社内規定を持ち出した。「『会社が認めたとき』については退院から再入院までの期間が三十日以内であることを原則にしている」と言ったという。

 Bさんは「消費者が知りえない社内規定を支払い段階で持ち出すのはおかしい」と怒る。

 健康状態の告知や医師による審査をせずに加入できる「無選択型」と呼ばれる医療保険についても、同センターは大きなずれがあると指摘する。

 契約前から発病していた病気や契約日から一定期間内に発病した病気については保障対象でないことが多い。しかし、パンフレットやテレビCMなどから「だれでも簡単に加入できるのだから、どのような場合でも保険金が支払われる」と誤解している消費者が多くなっているのだという。

 認識のずれが原因のトラブルが多く、同センターや各地の消費生活センターでは医療保険に関する相談が急増している。同センターによると、二〇〇一年度は七百三十六件だったが、〇五年度は千七百五十五件と約二・四倍に。本年度も〇五年度を大幅に上回るペースで相談が入っている。

 同センターは、生命保険協会や日本損害保険協会、外国損害保険協会に対して(1)実際には支払われないのに消費者が支払われると期待しやすい部分については継続的に注意喚起する(2)社内規定をはじめ支払いの可否を定めている文書は消費者が常に確認できるようにする−などを要望した。

 生命保険協会は「加盟会社に周知し、各社で対応を検討していく」(広報部)としている。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061214/ftu_____kur_____000.shtml