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「専門知識もない検察側が証拠もなしに断罪することが許されてよいはずがない」。今年9月の最終弁論で、弁護団は激しい口調で検察側を非難した。さらに、ソフトウエア技術者が萎縮(いしゅく)する危険性に触れたうえで、裁判所にも技術の是非についての判断には慎重さを求めた。
事件は、群馬県高崎市の男性(44)ら2人が、ウィニーを使って映画「ビューティフルマインド」やゲーム「スーパーマリオアドバンス」などを、インターネット上で自由に入手できるよう無許可で公開した容疑で京都府警に著作権法違反容疑で逮捕された=いずれも同法違反罪で懲役1年執行猶予3年の有罪確定=ことが発端になった。
金子被告はウィニーを開発・改良して無償で配布して2人の犯行を手助けしたとして、04年5月に同法違反幇助容疑で逮捕、起訴された。
逮捕前の任意捜査の段階で金子被告は、ウィニーを「違法にデータをやり取りするために生まれたようなソフト」などと供述したとされるが、公判ではこの供述を捜査側の「作文」とするなど、起訴事実を全面的に否認。04年9月の初公判から今年9月の結審まで、審理は丸2年に及んだ。
検察側は、実際に著作権侵害をした人物と一面識もない金子被告の犯行を立証するため、インターネット掲示板「2ちゃんねる」に金子被告が書き込んだとされる「開発宣言」などを引用し、「著作権保護のシステムに挑戦し、これを根本的に破壊する動機からウィニーを開発した」と指摘した。
そのうえで、ウィニーを「著作権法違反行為を増長・助長するために制作された」として、こうしたソフトを無料で公開して不特定多数の利用者にダウンロードさせたことが著作権侵害の幇助にあたるのは明らかだと主張している。
これに対し弁護側は、将来性と有用性が期待されているインターネット上で個々のコンピューター同士でファイルを共有する技術開発のためにウィニーをつくったと主張。著作権侵害の意図はなく、ユーザーが勝手に違法な使い方をしたことの責任を問われることはないとして、公訴棄却か無罪判決を求めている。
さらに、金子被告が逮捕されてウィニーの改良ができなくしたことが、ウイルス感染による各地の警察や自衛隊などの情報流出を招いたと指摘している。
情報ネットワーク法学会情報法研究部会長で、インターネットを巡る法律に詳しい岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「どのような結論が出るにせよ、判決では、どんな開発行為が刑事責任に問われるのか基準を示すべきだ。あいまいなままだと開発者が萎縮し、日本の科学技術の発展に影響が出る恐れがある」と指摘している。
http://www.asahi.com/national/update/1212/OSK200612110111.html