悪のニュース記事

悪のニュース記事では、消費者問題、宗教問題、ネット事件に関する記事を収集しています。関連するニュースを見つけた方は、登録してください。

また、記事に対するコメントや追加情報を投稿することが出来ます。

記事登録
2006年12月07日(木) 00時00分

多重債務問題 滋賀県野洲市の取り組み  東京新聞

 多重債務問題の解決を目指した貸金業制度見直し法案が大詰めだ。先月二十九日には、衆院財務金融委員会での可決に伴い、多重債務者を減らす施策として付帯決議した十一項目に「自治体の相談窓口の充実」が盛り込まれた。自治体の各部が連携して問題に積極的に取り組めば、相談件数も増え、生活再建につながりやすい。ひいては税収増も見込める。その先進例・滋賀県野洲市の取り組みを紹介する。 (白井康彦)

 野洲市役所の一階の奥にある生活保護の担当部署。訪ねてきた五十代の男性Aさんは、病気で働けないうえ、多額の借金を抱え「このままでは生活できない」と訴えた。病気の治療費も払いにくい状況だった。応対した職員は「多額の借金があるなら」と言って、Aさんを消費生活相談の窓口へ連れていった。

 相談員は嘱託職員の生水裕美さん。落ち着いて話のできる専用ブースに案内して、Aさんから債務や生活の状況をじっくり聞き、借金の解決方法を説明。「自己破産と生活保護の両方が必要でしょう」とアドバイスした。その場で、自己破産の手続きを進めてくれる司法書士の事務所に電話。Aさんが事務所を訪問する日程もセットした。

 その後、生水さんとAさんは生活保護の窓口に戻り、担当職員と三人で、生活保護の手続きを進める方針を確認した。

 裁判所が近く、破産の決定を下す見通しで、Aさんの債務は帳消しになりそう。生活保護も受けられるようになった。Aさんは仕事の日々に戻ろうと、病気治療に努めている。

      ◇

 人口五万人の同市で、生水さんは七年前から消費生活相談を担当している。多重債務の相談者には解決法の概要を伝え、自己破産や個人再生などの手続きが必要な場合は弁護士会や司法書士会を紹介。特定調停は債務者本人が簡易裁判所で行えるので、手続きの進め方を細かく教える。相談者が市税を滞納していることが分かると、その対応もする。

 「相談者の了解をいただけたら、一緒に税務課の窓口に行って滞納額を確認し、債務整理が終わってから分割返済してもらうように、税務課の了解を得たりするわけです」

 多重債務者は、国民健康保険の保険料や水道などの公共料金、学校の授業料などを滞納することも多く、これらの督促の担当部署とも連携。母子家庭の借金問題などで、児童家庭課とも協力しあっている。

 多くの市町村では、多重債務の相談に対して、弁護士会や司法書士会の連絡先を教える程度。それだと、役所内の他の担当部が相談者の生活再建にかかわりにくい。

 野洲市では生水さんが核になった役所内の横の連携が完全に定着。生活保護や滞納の督促などの担当部署への来訪者が多重債務者であることが分かり、その部署の担当者が来訪者を生水さんのもとに連れてくる、といった逆パターンも多い。多重債務関連の相談件数は、今年四月からの八カ月間で約百件に達する。

 市広報紙や出前講座を通じて、住民への啓発にも取り組んでおり「多重債務者の相談需要の掘り起こしが確実に進んでいる」と生水さんは手応えを感じている。

      ◇

 付帯決議には「各地方自治体に対し、多重債務者に対する相談窓口を設置して適切な助言を行い、カウンセリング機関とのネットワークを構築して、必要な紹介を行うなど、多重債務を抱える住民に対する支援体制を整備するよう、要請を行うこと」という文言が盛り込まれている。

 先月十五日には同委員会審議の答弁の中で、渡辺喜美内閣府副大臣(金融担当)が、全国の市町村に多重債務の相談窓口を設けていきたいという意向を述べた。

      ◇

 全国の法律家らがメンバーの「行政の多重債務者対策を充実させる全国会議」は十七日午後一時から名古屋市の名古屋中小企業福祉会館で、多重債務問題と行政のかかわりをテーマにした緊急集会を開く。日弁連上限金利引き下げ実現本部事務局長の新里宏二弁護士が基調講演。野洲市のほか、長野県、岐阜県などの先進的な取り組みが報告される。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061207/ftu_____kur_____001.shtml