2006年12月04日(月) 13時32分
<近未来通信>捜索で投資家怒り 「すべてウソだったのか」(毎日新聞)
IP電話の将来性で急成長していたITベンチャーの「近未来通信」(東京都中央区)に、警視庁の捜索が入った。「営業なしの収益スタイル」「独立・起業・副業をお考えのあなたへ」。有名女優を使った広告で投資家を勧誘してきた。「華やかな事業プランも、ランプを点滅させていた、あの通信サーバーも、すべてウソだったのか」。切実な被害を訴える投資家たちから怒りの声が上がっている。
「老後の収入のため退職金をはたいた。なのに、詐欺だったのか」。近未来通信に約1800万円を投資したさいたま市の無職男性(56)は、取材に肩を震わせた。今年1月に投資し、配当はまだ、ゼロ。「警察の捜査は当然だ」と憤る。
新聞広告の「中継局オーナー制度」に関心を持ち、中央区の同社ビルであった説明会に参加した。石井優社長は「IP電話市場はもっと大きくなる。海外のなかでも、とくに中国への事業展開はうまくいくでしょう」と展望を語った。
そして、個別相談を希望する参加者だけが、応接室に移る途中、ビデオデッキのような機械20〜30台を収納した棚のある部屋を、ガラス越しに見た。「あれが中継局です」。幹部社員は「月に50万円は配当がある。投資金は3年で回収できます」と熱っぽく語った。
契約書によると、自分が「オーナー」になった中継局は埼玉県川口市のワンルームマンションの一室にある。11月下旬に訪ねたが、呼び鈴に応答はなく、中の様子はうかがえなかった。「本当に中継局などあるのか」。不信は募った。
東京都足立区の無職男性(51)は約2年前、実家の土地を売った1200万円を投資した。「先行きが明るい業種だし、『オーナー』という言葉に事業に参加する気持ちになった。配当金を頼りに、母親の介護に専念したかった」と話す。
社員の勧めで同社ビル内の「中継局のサーバー」を見学した。赤と緑のランプが点滅する機械をみて、「稼動している」と納得した。配当金も投資額の半分はもらった。ところが、今年10月に「配当を待ってほしい」と文書が届いた。問い合わせに幹部は「週明けに連絡する」と答えたが、それきり連絡がない。
総務省の調べでは、サーバー2466台のうち、稼働していたのは、わずか7台。181億円の売上高のうち、配当原資となる通信料収入は2%に満たなかった。同省幹部は「電話事業の実態があったとは思えない」と話している。【永井大介、鳴海崇】
(毎日新聞) - 12月4日13時32分更新
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