2006年11月27日(月) 11時01分
にいがた発・ワールドニュース:タウンミーティングと野球 /新潟(毎日新聞)
<WORLD NEWS>
各地で「やらせ」が発覚し、大きな問題となった政府のタウンミーティング。それが、野球と深いかかわりを持っているとは知らなかった。
今月17日、高校の野球部長らを集めた県高野連主催の講演会が、新潟市内で開かれた。講師は、野球の歴史に詳しいノンフィクション作家の佐山和夫さんで、演題は「野球とは何か」。
佐山さんによると、米国で誕生したベースボールの原形はタウンボールという球技。タウンミーティングの日に行われるため、その名が付いた。打者が球を打ち、四つの塁を回ると1点。守備側は塁間で走者に球をぶつける(柔らかい球が使われた)とアウト。
ベースボールと大きく異なるのは、▽投手は打者に打ちやすい球を投げなければならない▽打席は一塁と本塁の中間にある——など。投手が打者を打ち取るという発想はなく、球を打てば一塁までならほとんどセーフ。だから老若男女、誰でも参加できた。
タウンミーティングも今とは意味が違う。地域の重要事項を決める会議で、住民の全員参加による全会一致が原則。だからタウンボールも、「誰もが参加できる競技」でなければならなかった。
タウンボールのルールを改め、ベースボールが出来たのは1857年。だが、タウンボールの精神は受け継がれた。(1)試合の時間制限がない(2)選手全員が打席に立つことができる、など。(1)は自由、(2)は平等。つまり、ベースボールは、米国の建国精神である自由と平等、民主主義を体現する競技なのだという。
その約10年後に日本は開国。まもなくベースボールが入ってきて、日本でも野球は人気スポーツになった……。
来年でベースボール誕生から150年。世の中は大きく変わった。ベースボールや野球を取り巻く環境も、民主主義のあり方も。それが発展なのか、退廃なのか。タウンミーティング「やらせ」問題の行方を見つめながら、じっくり考えてみようと思う。次回は「いじられキャラ」について。(新潟支局長、柴田朗)=毎週月曜に掲載
11月27日朝刊
(毎日新聞) - 11月27日11時1分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061127-00000043-mailo-l15