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2006年11月23日(木) 00時00分

多重債務問題で国際会議 東京新聞

 多重債務者の救済活動をしている日本と韓国、台湾の法律家や政党関係者らが、国際的に連携して問題解決に当たろうとする運動を始めた。日本で、多重債務問題の解決を目指した貸金業制度抜本改正の関連法案が国会に提出されたことは、韓国や台湾など海外でも注目を集めているようだ。 (白井康彦)

 日本、韓国、台湾の弁護士や学者、政党関係者らが話し合う「第一回多重債務対策国際会議」が十七日に鹿児島市内で開かれた。弁護士や司法書士らでつくる「全国クレジット・サラ金問題対策協議会(クレサラ対協)」が企画し、韓国や台湾のさまざまな団体に呼びかけて実現した。

 参加者にショックを与えたのが、多重債務で苦しんだ韓国の二十五歳の女性の体験談だ。

 女性の父親が十一年前、事業の不振で家出。その債務を引き継ぐような形で、女性とその母親は借金生活に入った。返済のために追加で借りる自転車操業の結果、今年夏には借入先が女性は六十、母親は七十にまで膨らんだ。女性は「大きな精神的圧迫を受けていた上、貸金業者の取り立て訪問が続いて普段通りの生活ができなくなった」と話した。

 二人は韓国国会の野党である民主労働党が多重債務者の救済活動をしていることを知り、八月に同党の支援で破産申請をした。ところが、九月中旬のある日の深夜、女性の勤め先の店をヤミ金融業者が訪問。女性は「業者が周囲の人に迷惑をかけるのでは」と懸念して、業者が言うとおりに店を出た。

 業者は「二十四時間おれと一緒にいなければならない」と脅迫。女性が母親の家に逃げ込んだ後も、業者は翌日の昼まで見張りを続けた。

 業者が家の中に入ろうとしたため、女性は同党や警察に電話し、同党幹部と警察官が到着した。しかし、警察官は「私的な問題だから当事者間でうまく解決してくれ」などと言い、真剣に対応してくれなかったという。

   × ×

 韓国は一九九七年に経済危機に見舞われて政策転換。翌年から、貸金業者の貸出金利規制の撤廃や、クレジットカードの急激な普及促進策などを進めた。その結果、クレジットやローンの使いすぎで多重債務に陥る人が激増。貸金業者の数も猛烈に増え厳しい取り立てが日常化した。業者が債務者の女性に「身体放棄覚書」を書かせて売春を強要した事件もあった。

 今は貸金業者の上限金利は年66%となっているが、それを超えた金利で貸すヤミ金融業者が多い。多重債務者は人口の一割強の約五百万人という説もあり、問題の深刻さは日本を上回る。日本の貸金業者の韓国進出も目立つ。

 台湾では近年、銀行がクレジットやローンの売り込みを猛烈に進め、昨年から多重債務問題が目立つようになった。台湾の弁護士は国際会議で「ヤミ金融業者の取り立てで一家心中する例もある」と説明した。

 日本では、貸出上限金利が年29・2%から20%に引き下げられるなど、貸金業者に極めて厳しい内容の貸金業法案が国会に提出された。それに対して、韓国では民主労働党が提案しても、上限金利大幅引き下げなど貸金業者への厳しい規制強化策が国会を通らない。

 何が違うのだろうか。国際会議で話題になったのは、多重債務問題の原因のとらえ方だ。

 日本では、クレサラ対協などの粘り強い運動によって政府や国会、マスコミに「貸金業者の高金利の過剰融資を許す社会構造に原因がある」という見方が広まった。一方、韓国や台湾の参加者は「借り手の個人の問題」と考えられる傾向が強いことを報告した。

 クレサラ対協事務局長の木村達也弁護士は「社会構造の問題であるという認識を定着させるのが大事。法律家やマスコミは、それを訴え続けていかなければならない」と韓国や台湾の参加者にアドバイス。「今後もこうした国際会議を開いていこう」と、参加者の意見が一致した。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061123/ftu_____kur_____000.shtml