2006年11月22日(水) 08時01分
ネットに中傷「転載」者 名誉棄損認めず 米加州最高裁判決(産経新聞)
【ロサンゼルス=松尾理也】誹謗(ひぼう)中傷など名誉棄損情報をインターネットに「転載」した者に賠償責任があるのか否かが争われた訴訟で、カリフォルニア州最高裁は20日、「インターネットの利用には広く名誉棄損からの免責が認められている」としてネット上の言論の自由を最大限に認める判決を言い渡した。判決は、名誉棄損文書を作成した本人以外はすべて免責されると結論づけたが、同時に「自主規制の奨励」も求めた。
この訴訟では、ネット上の名誉棄損で巨額の賠償責任が生じることを恐れるグーグルやヤフー、マイクロソフトといったIT大手が軒並み被告側の支援に回った。敗れた原告側代理人はAP通信に「判決は不愉快な情報の氾濫(はんらん)を促進するものだ」と不快感をあらわにした。
この訴訟では、インターネットで医療問題に関する掲示板を運営する女性が第三者の書いた中傷文書を転載したため名誉を棄損されたとして2人の医師から訴えられた。文書が2人の名誉を棄損しているのは疑いなく、争点は、中傷をネット上で「転載」した女性に賠償責任があるのかどうかに絞られた。
一審は医師側の訴えを退けたものの、控訴審は一転して名誉棄損の成立を認めた。この日の州最高裁判決は「別の情報源からの情報を公開する場としてインターネットを利用する場合、1996年に成立した米通信品位法によって名誉棄損からの高度な免責を与えられている」と指摘し、「転載」者の賠償責任を認めなかった。
米国では、従来のメディアが名誉棄損情報を流した場合、「出版者」(新聞社やテレビ局など)は名誉棄損と認識していなくても結果として賠償責任を負う。「販売業者」(新聞販売店や書店など)であっても名誉棄損に当たることを認識していれば同じく賠償責任が生じる。
この日の判決はインターネットの世界ではそもそも「出版者」と「販売業者」の区別がない上、たとえ「利用者」という新しい概念を導入したとしても、それがどのような立場なのか明確には定義できないと指摘した。
しかし、判決は「全面的な免責を与えることはよくない結果を招きかねない」とも述べ、「立法の意図は、ネット上の言論の自由の保護と同時に自主規制の奨励にもある」と言及した。
(産経新聞) - 11月22日8時1分更新
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