悪のニュース記事

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2006年11月20日(月) 00時00分

サイバー大学朝日新聞

 「大学って何のため、誰のためにあるのだろう」。10年くらい前から、早稲田大で教えながら考えていた。

 「何のため」というのは単純だ。社会のため、国のため、人類のためだ。「誰のため」がくせものだ。お金を払っているのだから学生のためであり、それにお金を出しているのだから家族のためでもあろう。これは「受け手」の問題だ。

 一方、「出し手」の教員のためでもあるはずだ。もらった給料で家族を養い、自分の研究を進める。研究は自分が好きで始めたことだから自前をはたくのが基本だ。

 教えるのも自分のためと考えていいだろう。自分が社会をつくる人材育成に役にたっているという誇りがもてるからだ。

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 しかし、今の大学ってこうなっているだろうか。私は教育と研究をきちんと分けたらどうかと考えている。

 別々の先生がやるというのではなく、教育をするためにも教員がもっと研究すべきだと思ったのである。研究に情熱をもたない教員が少ないと感じたこともあるが、私立大の場合、「学務」という雑用が少なくない。

 教育は時間が決められているので避けられないが、研究は自分のものだからやらなければやらなくて済む。その口実に委員会のような雑務が多いからとか、研究費が少ないからと言う。

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 私は、こうした問題を少なくとも改善するためには、インターネット社会を利用した新しい型の大学をつくらなければならないと考えている。若い人を本当の意味で学生らしく育てる環境をつくるには、自分で大学をつくるしかないと考えた。

 すべての講義は、インターネットを通じて受けてもらう。おのおのの講義は事前にサーバーに入れてあるから「休講」もない。学生はパソコン片手にいつでもどこでも受講できる。通学の必要がないのでハンディキャップの人も無理なく教育が受けられる。

 私はこの夢実現のために、様々な企業にこの大学設立の提案をしてきた。その結果、ソフトバンクが支援してくれることとなり、「サイバー大学」を07年春に福岡市に開学する計画をたて、現在、認可待ちの状況だ。

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 提案の時点でこの新しいインターネットでの教育の考え方に異論を唱える人々が続出した。「ふれ合いのない教育は人間形成上問題だ」という。では、今の大学のどこに人と人のふれあいがありますか。

 学生のほとんどはサークル活動で、それを行っているのが実情だ。通学しないということと、実体験がないこととは同じではない。大学に来ない代わりにボランティア活動やインターンシップで社会と早くからかかわれる。

 社会から教員も学生も隔離されている今の大学こそ、人と人のふれ合いをなくしているのだ。

 大学教育はサービスが大切だと考えている私は、株式会社組織で経営状態は明らかにし、ご批判を受けるつもりだ。

 利益がでたら、それを教育の充実と研究の推進にまわそうと考えている。今は世界遺産学部とIT総合学部しかないが、近い将来、日本学部を作り、アジアに出るつもりだ。日本一、世界一の大学にしようと、新しい夢に向かっている。(早稲田大学)

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 次回からは、東京女子体育大の秋山エリカ助教授のシリーズです。

http://mytown.asahi.com/tama/news.php?k_id=14000150611130001