2006年11月10日(金) 12時12分
無料でない“フリー”ソフトウェア(japan.internet.com)
出版メディアに掲載されたさまざまな会社の広告を見た場合、たいていは正規のビジネスの広告だと思うはずだ。しかし、大手の広告業者が、通常無料で提供されているソフトウェアをサードパーティの会社が消費者に有料で買ってもらうための宣伝を流しているとしたらどう思うだろうか。
あるアンチスパイウェア研究者の主張によると、これはまさに検索エンジン Google が、一部の広告に対し許容していることだという。
制限を拡大した広告
その研究者というのは、ハーバード大学法学大学院卒のアナリスト Ben Edelman 氏だ。彼については、
前回のコラム でも取り上げたが、そこで彼は“信頼できる” Web サイトを証明するプライバシーシールの販売を行うサードパーティ機関、TRUSTe を批判していた。その同じ週、彼が言うところの「虚偽表示を行ってユーザーの金を奪い取る」例として、Google を批判するレポートを発表している。
・Skype、WinZip、Firefox などの販売
VoIP ソフトウェアの Skype や圧縮ツールの WinZip、Firefox ブラウザなど無料のプログラムを Google で検索すると、「無料ダウンロード」と書かれた広告が表示される。しかし、Edelman 氏によると、これらの場合多くは、「ユーザーが購読料を支払った場合だけ、特定のサイトで特定の商品を購入することができる」という(強調文字はオリジナル文と同様)。
Edelman 氏はこのレポートで、 Google が許容する詐欺広告の具体例をあげている。
・無料のはずの着メロが実は有料
着メロは Google で人気の検索トピックである。“着メロ”で検索すると、検索結果に携帯電話用“無料”ダウンロードと書かれた広告がたくさん表示される。
この多くは、無料の試用期間終了後に自動的に有料サービスに切り替えるネガティブオプション(押し付け)といった商法で、月々9.99米ドルもかかる場合もあると Edelman 氏は指摘する。もっと悪質なことに、「クレジットカードいらず」と宣伝する着メロ広告では、利用料が携帯電話の請求料金に加算されることを明示しない場合が多いこともわかった。
・純正ソフトウェアのはずが実は違う
Edelman 氏によると、このほかにも Google が提供する広告の中には、 Spybot Search & Destroy や Ad-Aware などの純正アンチスパイウェアを提供しているとほのめかす広告があるという。「実際には、これらのサイトでは主に別のソフトウェアが扱われている」と Edelman 氏は報告する。
なぜインターネットユーザーは、オリジナルのパブリッシャから無料で手に入れることができるソフトウェアにお金を払ってしまうのだろうか? Edelman 氏によると、「初心者や慌てているユーザー」は、損な取引であることに気づかないのかもしれない。
例えば、Microsoft の Internet Explorer ブラウザがセキュリティに甘いと聞いたユーザーが、その代替として Firefox を手に入れようとする場合、より安全な商品にアップグレードしようと思うユーザーにとっては、小額料金が理不尽には思えないのかもしれない。
批判に対する Google の反応
Google のエグゼクティブに Edelman 氏の主張について尋ねたところ、広報代表の Barry Schnitt 氏からメールで声明文が寄せられた。
声明文によると、「詐欺広告は、見つけたら削除する」「Google AdWords の編集ガイドラインで『有料とか特別割引とか“無料”サービスを含む広告は、そのようなサービスについて、待ち受けページから1〜2クリック以内のところにはっきりと正確に表示しなければならない』と定めている。レポートでふれられた広告をもう一度見直し、ガイドラインにそぐわないものは削除する」とのこと。
Edelman 氏も、調査結果について自身で Google に問い合わせたところ、同様の回答を得たという。同氏はメールで、自分が報告した広告を Google がまだ(その時点で)削除していないことを打ち明けてくれた。
Edelman 氏からのメールには、次のように書かれていた。
「このような広告が Google の方針に従っているといえるのだろうか? そうだとしたら警告を受けてから5日後の現在でもまだ Google のサイトから消えていないことの説明がつく。しかし、‘無料’でないのに‘無料’と宣伝するサイトや、本当は無料のソフトウェアを有料で販売しているサイトを受け入れるのなら、Google の方針が甘いとしか言いようがない」
Edelman 氏自身、Google などの Web ポータルを詐欺広告の配信の事実から守ることができる可能性のある法的防御策をあげている。米国では CDA(通信品位法)により、「インタラクティブなコンピュータサービスプロバイダ」は、他者のコンテンツを自らのサービスで配信する場合、「パブリッシャ」としては扱われないことになっている。
しかし Google はただのコミュニケーションチャネルではなく、一部の広告に対しては編集を行ったり、
コンテンツポリシー により配信を断る広告もあると、Edelman 氏は指摘する。
最近 Google は文書方針の中に、アルコール、爆発物、タバコを新たに禁止事項に加えている。このことで、Google に対する訴訟が起きた場合、 CDA の保護対象から外れることになるかもしれない、と Edelman 氏は推測するが、「今まで誰もそのような訴訟を起こそうとしたものはいない」。
Edelman 氏は、「法的責任とは関係なく、倫理の問題として、Google は広告が安全なものになるような努力をすべきだ」という。
結論
Edelman 氏による検索エンジン広告の調査結果は、彼の
Webサイト BenEdelman.org で、実例のイラストつきで紹介されている。これは幾分恐ろしい内容でもあり、“Buyer beware”(購入者よ、注意せよ)のことわざを思い起こさせるものになっている。
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(japan.internet.com) - 11月10日12時12分更新
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