2006年11月06日(月) 03時13分
<病気腎移植>摘出前から運搬準備 「患者同意後」と矛盾(毎日新聞)
愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で病気のために摘出した腎臓を別の患者に移植する11件の手術が行われた問題で、岡山県内の3病院でドナー(腎臓提供者)の腎臓を摘出した際、宇和島徳洲会病院の医師が臓器を運搬するために、この病院であらかじめ待機していたことが分かった。同病院の万波誠医師(66)は記者会見で、「移植手術の準備は臓器の摘出後、レシピエント(移植を受ける患者)の同意を得た後で始めた」と説明しているが、実際には摘出前から準備を始めていたことになり、今後、問題になりそうだ。
11件の手術のうち、岡山県では岡山市や備前市などの病院で計3件の腎臓を摘出。患者は腎腫瘍(しゅよう)などで入院していた50〜70代の男女で、摘出はいずれも万波医師の実弟の廉介医師(60)が担当した。
いずれも、宇和島徳洲会病院に勤める万波医師の同僚医師が臓器を保存、運搬するための機器を持って来院。腎臓摘出後、廉介医師と2人で車に乗り、臓器を宇和島徳洲会病院に運んだという。廉介医師は「移植できる可能性がある腎臓を摘出する場合は、取りに来るよう頼んでいた。(自分が摘出を手がけた)どの場合でも来ていた」と話している。
一方、万波医師は宇和島徳洲会病院の記者会見で、「保存液に浸しておけば(腎臓は)72時間は使える状態を保つことができる。その間に(レシピエントと家族に)十分に説明する」と、患者側が移植に同意していたことを強調。その際、「腎臓摘出前にレシピエント側に説明することはない」とし、移植手術は「(レシピエント側の)了承を取った後に準備する」と説明しており、岡山のケースと矛盾する。このため、実際はレシピエント側の同意より、移植手術の準備を優先させていた可能性が出てきた。
ある大学病院の泌尿器科医師は「がんなどで腎臓を摘出する場合は、出血量を減らし、がん細胞が広がるのを防ぐために、最初に動脈を縛って血流を止める。これに対し、移植のための摘出は腎臓をできるだけ長く生かす必要があるため、血管の処理は摘出直前に行う。手術の方法が違い、最初から移植に使うつもりだったはずだ。患者は通常よりリスクを負うことになり、問題がある」と指摘している。
(毎日新聞) - 11月6日3時13分更新
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