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頭打ちが続く出版市場の活路をインターネットに求める試みが、辞書や漫画でスタートする。三省堂は国語辞書と英和・和英辞書を書籍とウェブで10月に同時出版する。一方、電子書籍を販売するイーブック イニシアティブ ジャパンなどは、日本漫画を海外にネット配信する事業を9月に開始した。
デジタル辞書が急伸少子化、多メディア化・・紙媒体を取り巻く環境は厳しい。出版科学研究所によると、05年の国内出版物の推定販売額は2兆1964億円で9年前の96年に比べ、約4600億円もの落ち込みだ。
「冬の時代」に三省堂が出した結論は、書籍版とウェブ版で辞書を同時出版する「両面作戦」だった。
辞書の売り上げは96年の1200万冊から、05年には約半分の650万冊まで落ち込んだ反面、IC電子辞書は100万台から330万台へと急伸している。
三省堂の八幡統厚社長は「中身は同じなのに、紙の辞書で調べるのを面倒くさがる人がデジタル辞書を利用している」と背景を分析。デジタル辞書の急伸ぶりに押される形で、ウェブ進出を決断した。
10月27日に刊行予定の同社の大型国語辞典「大辞林」(第3版、07年5月まで特別価格7665円)は11年ぶりの全面改訂。ウェブ版では書籍版に収録された23万8000項目の見出し語すべてを検索できる。このほか、書籍版に載らなかった約1万語の新語・俗語も収容する。書籍改訂版までには掲載できない新語なども随時追加し、内容の充実を図る。
10月10日に刊行されたのが「ウィズダム英和辞典」(第2版、3465円)と「ウィズダム和英辞典」(初版、同)。ウェブ版は書籍版の内容を完全収録するほか、英和辞典には約6000語をネイティブの発音で読み上げる機能も付属している。
3辞典いずれも、書籍購入後にウェブ版利用のパスワードをネット経由で申し込む。
独自技術でマンガ海賊版排除日本が世界に誇るコンテンツ、「マンガ」。海外では海賊版も出回るほどの人気だ。しかし、国内では少子化の影響もあり市場は縮小気味だ。
「唯一の国際出版物、漫画を海外販売することで、先細り気味の国内コンテンツ市場を支えたい」と意気込むのはイーブック イニシアティブ ジャパンの鈴木雄介社長。
同社では9月から、里中満智子さんの「海のオーロラ」、水木しげるさんの「鬼太郎大全集」など30作品100冊の電子書籍を中国語(簡体字)に翻訳し、シンガポールで販売し始めた。1冊の価格は5・8〜8・8シンガポールドルで、2年間で2億円の売り上げを目指す。課金システムは、海外でコンテンツ配信事業を展開する京セラコミュニケーションシステムの子会社が担当する。
海賊版対策として、イーブックは独自の電子書籍フォーマットを採用しており、購入した書籍のデータを別のパソコンにコピーしても、作品を閲覧できない。里中さんは「出版・流通の壁を乗り越えた電子媒体で世界中どこでも漫画が読めるのは素晴らしい」と期待を寄せる。
音楽・映像産業では、コンテンツの入れ物が変化する「媒体転換」と呼ばれる現象が起きてきた。カセットテープからCDさらに携帯音楽プレーヤー、ビデオテープからDVDへという流れだ。書籍の世界も、デジタル化による媒体転換が本格的に始まろうとしている。折しも、松下電器産業、角川グループホールディングス、TBSの3社も電子書籍事業での提携を9月に発表した。
グーテンベルクの活版印刷の発明以来、文字と不可分だった紙がデジタルメディアに取って代わられようとしている。(林 宗治・編集部/2006年10月24日発売「YOMIURI PC」12月号から)
「Dual 大辞林β版」http://djr1tri.dual-d.net/