2006年10月31日(火) 12時33分
<岐阜裏金>キーパーソン逮捕で新たな局面(毎日新聞)
岐阜県庁の裏金問題で、業務上横領容疑で逮捕された元県職員組合副委員長、木下三千男容疑者(49)は逮捕前の取材に対し、組合口座から引き出したとされる裏金約1000万円について「私的に使ってはいない」と断言、自分を告発した県への批判を繰り返していた。ところが、県警の事情聴取には一転して容疑を認めたという。県などの調査では明らかにならなかったさまざまな問題が今後の捜査でどこまで解明されるのか。裏金の経理を担当した“キーパーソン”の逮捕で、裏金問題は新たな局面に入った。【稲垣衆史、中村かさね】
木下容疑者は97年10月から6年間にわたって県職員組合の役員を務めた。組合関係者らによると、経験の豊富さから組合内では一目置かれる存在で、元組合委員長でもある藤田幸也元出納長ら県上層部とも交流があった。
関係者らの話では、会計をはじめ組合の事務を取り仕切るのは通常、書記次長の仕事だが、木下容疑者は00年10月に書記次長から副委員長に昇格した後も事務を仕切っていたという。ある関係者は「おかしいと思っていた」と話す。「面倒見がいい」との評価がある一方で、「残業はせずに、よく飲みに行っていた」と話す関係者もいる。
木下容疑者は逮捕前の今月下旬、2回にわたって毎日新聞の取材に応じ、私的流用の疑いについて「捜査の段階で違うと立証していく」と強く否定していた。口座から引き出した点についても「委員長の指示がなければ引き出せない」と前組合委員長から指示されたことを示唆していた。
また木下容疑者は、逮捕容疑になっていない残りの500万円が入金された「岐阜県職雅(みやび)会」名義の口座について、県などの調査に対し「選挙資金用に作った」と説明。「200万円と約300万円は前委員長の指示で引き出した」と証言している。しかし、前委員長は取材に「でまかせだ」と全面否定。後任の書記次長も「(雅会口座の)存在自体知らなかった」とするなど、木下容疑者の証言と食い違いを見せている。
さらに、藤田元出納長が組合に集約を依頼した際の状況について、木下容疑者は「『組合で使える金を渡すから』ということだった」と述べ、組合活動費などへの流用を藤田元出納長が容認していたと主張。だが弁護士の第三者機関の報告では、藤田元出納長本人はこのやり取りを否定している。
◇「私的に使ってはいない」…逮捕前に木下容疑者
木下容疑者との主な一問一答(今月25日と28日)は次の通り。
——1000万円を私的流用したとされるが。
個人的に使えばすぐに分かる。今まで一回も1000万円をどうしたか聴かれなかったのが、ここへ来て急に状況だけを見て僕が使ったことにされている。
——私的には使っていないのか。
私的にはない。当時、口座を作ったり、払い戻したりしていたのは僕の仕事だったので、僕が全部着服したのだろうと。(県は)そういう判断で告発したので、僕は捜査の段階で違うと立証していくだけだ。
——引き出しは独断か。
僕の仕事は管理であって、委員長の指示がなければ引き出せない。
——何に使ったか。
僕には分からない。
——県の処分は。
ものすごく不公平な処分。人数は多いが、偏っている。
——(当時の出納長の)藤田(幸也)氏はどう言ったか。
要は「組合で使えるお金を渡すから」ということだった。だから組合の特別会計に入れたりした。その指示がなければ勝手にできない。
——使っていいと。
それが条件みたいなところがあった。うちが預かるだけなら、使うことはありえない。あの人が(組合への集約を)考えなければ我々もこんなことで疑われなかった。県も他の県と同じように「ごめんなさい」と謝ってくれれば、今みたいなこともなかった。僕が管理したことは事実なので、責任取って辞めざるをえないと思う。だが懲戒免職は納得いかない。
——県上層部は当時、どういう考えだったか。
分からない。(預けた後の)その先は何も考えていなかったと思う。預けっぱなしで、逆に言えば使えないものは出してしまえという感じだったと思う。
◇木下容疑者の自宅を家宅捜索…岐阜県警
岐阜市御望の木下容疑者の自宅には31日午前5時ごろ、岐阜県警の捜査員約10人が家宅捜索に入った。近所の住民らが不安そうに見つめる中、捜索は約3時間にわたって行われ、捜査員が次々と段ボール箱を運び出した。近所の女性は「人柄のいい男性だったので信じられない」と驚いた様子。木下容疑者と親しかったという男性は「1人だけ責任を負わされた格好ではないか。取り調べですべてを話し、幹部の責任まで全容を解明してほしい」と話した。
(毎日新聞) - 10月31日12時33分更新
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