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この保険は、消費者金融会社が契約者となって生命保険会社に保険料を払い、顧客である債務者が被保険者という仕組み。債務者が死亡したときには借金残高の金額が保険会社から支払われるので、消費者金融会社は貸倒損失を発生させずにすむ。
母親が多重債務を苦にして自殺した経験を持つ兵庫県伊丹市の主婦、弘中照美さん(46)が今年三月、消費者金融大手のアイフルなどに損害賠償を求めて提訴したのが、批判が高まるきっかけ。
弘中さんは「母の死後、消費者信用団体生命保険の契約者だったアイフルに死体検案書などの提出を求められて精神的苦痛を受けた」「命を担保にするのは公序良俗に反する」などと主張する。
八月には、二〇〇五年度に消費者金融大手五社が保険金を受け取って死因が判明した約一万九千件のうち約三千六百件が自殺だったことが表面化。この保険についての批判的なマスコミ報道が相次いだ。
こうした情勢を受けて消費者金融各社が取り扱い中止を決めた。「総合的に検討した結果」とあいまいに説明した会社が多いが、「扱い続けることによるイメージダウンをおそれた」というのが真相のようだ。
さらに二十四日、自民、公明両党は債務者が自殺した場合の保険金支払いを禁じる方針を決めた。
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消費者金融に詳しい弁護士らは「この保険に関する最大の問題点は債務者への説明不足だ」と口をそろえる。消費者金融各社は債務者との契約書の中に、この保険の被保険者になるという条項を盛り込んでいただけだ。
そのため、マスコミが「債務者は命を担保にした保険に知らないうちに入らされている」と盛んに報道。
消費者金融会社の厳しい取り立ての主因は債権回収に関する社員へのノルマがきつかったことなのに、「消費者金融会社は命を担保に取って債務者を自殺にまで追い込んでいるのではないか」という不気味なイメージまで広がってしまった。
顧客へ契約内容をしっかり説明するのは保険契約では基本中の基本。これを省いてきた「ツケ」は大きかった。
それならば、しっかり説明するシステムを作ればいいわけだが、難しい面がある。消費者金融の契約の大半は無人契約機で結ばれる。「簡単に借金できる」ことが利用者に好まれている状況を変えづらいのだ。
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本紙生活部にはときどき読者から「多重債務者だった家族が死んで、消費者金融会社から返済を迫られている。どうしたらいいか」という声が寄せられる。「マイナスの財産」である借金も相続されるので、消費者信用団体生命保険を扱っていない消費者金融会社が遺族に返済を請求し、遺族が戸惑うことが多いのだ。
消費者金融各社がこの保険の扱いをやめることで、請求されて困る遺族が増えそうだ。
「相続放棄」が有効な対策になることが多いが、相続にかかわる全員が放棄の手続きする必要があるほか、相続放棄が国民にほとんど知られていないという問題点もある。マイナスの財産を残された遺族がアドバイスを受けやすい社会づくりが急がれる。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20061026/ftu_____kur_____000.shtml