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2006年10月25日(水) 07時01分

靖国神社の総代に神社本庁総長 宗教性守る狙い朝日新聞

 靖国神社(南部利昭宮司)の運営方針を決める崇敬者総代(計10人)の1人に11月1日から、全国約7万9000の神社を束ねる神社本庁のトップ、矢田部正巳総長が就任することが分かった。靖国神社は本庁とは協力関係にあるが、その傘下に入らない単独の宗教法人として運営されてきた。今後、矢田部総長が靖国神社の意思決定に関与することで、A級戦犯の分祀(ぶんし)や国家管理による非宗教法人化などの見直し論に対し、神社界全体で靖国神社の宗教性を守る狙いがある。

 崇敬者総代はこれまで、経済人や学識者、日本遺族会役員らが務めてきた。年に数回、総代会を開いて神社の予算や決算、運営方針を決めている。任期は3年。関係者によると、11月1日付の一部改選に合わせ、矢田部総長が加わるという。

 矢田部総長は三嶋大社(静岡県三島市)の宮司を務め、04年に総長に就任。神社本庁と靖国神社との間には、一般神職の人事交流はあるが、トップの総長が靖国神社の総代になるのは初めて。

 A級戦犯の分祀論に対し、靖国神社は「神道の教義上できない」との立場を表明している。麻生外相が8月に提言した国立施設化などについても、(1)神道儀式(2)神社の景観(3)「靖国神社」の名称——の3点を変えないことが受け入れ条件で、「非宗教化」には応じない方針だ。

 神社本庁も、小泉首相(当時)の靖国参拝を機に高まりを見せる見直し論議に対し、「(分祀は)神社祭祀(さいし)の本義からあり得ない」「靖国は戦没者慰霊の中心」という見解を昨年表明し、側面から靖国神社を支援してきた。両者とも宗教性の堅持が考え方の基本にあり、今回の人事でこうした路線の強化を図る。

 靖国神社は戦後、神道が国家管理から外れた後も、ほかの神社が集った神社本庁の包括下に入らずにきた。「いつか国にお返しする特別の神社」(靖国関係者)であることが理由だった。総長が総代に就任しても、靖国神社が組織として神社本庁に加わるわけではないが、両者の関係は密接になる。

http://www.asahi.com/national/update/1024/TKY200610240397.html