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●数字書き加え
「これ、ちょっとおかしいんじゃないの?」
宮城県内の40代の女性から債務整理の相談を受けていた佐藤靖祥弁護士は、二つの書類を見比べて首をかしげた。
消費者金融のCFJ(旧ディックファイナンス)が開示した取引記録と、女性の預金通帳の写し。同じ日付の欄は取引記録の借入額が「18万5086円」、通帳の入金額は「8万5086円」。業者側が通帳の数字に「1」を書き加え、借入額を水増しした疑いが濃かった。食い違いは次々と見つかった。
CFJを問い詰めると、「正しい記録」を出してきた。債務を計算し直すと、取り戻せる過払い金が100万円近く膨らんだ。
女性は同社に慰謝料を求める裁判を起こした。昨年夏に出された判決は、同社が「貸付額や弁済額を有利に操作した」と、数十カ所の改ざんを認定した。
不正開示について、同社は03年に社内調査を実施。改ざんは800件を超え、水増しは総額2億円近くにのぼった。ある元社員は「支店の営業ノルマ達成のためにはやらざるを得ない雰囲気があった」と話す。正しい記録を出そうとすると、上司に「こんな金額で決裁がもらえると思うか」と言われたという。
大量の改ざんは03年初めにアコムでも判明している。CFJが作成した報告書には「アコムから移ってきた幹部が再計算書の操作を指示し、かなりの影響を与えた」と書かれていた。
●出し渋り
昨年1月、奈良県内の会社員の男性がアイフルを提訴。グレーゾーン金利で払いすぎた利息の返還などを求めた。
男性に債務整理を頼まれた深水麻里弁護士は、同社に取引記録の開示を求めた。書類上は、99年1月にいったん完済し、その後4年間取引がないことになっていた。
だが、しばらくして男性は「そんなはずはない」と言い出した。02年に親族から借金して200万円を一括返済したことを思い出したという。深水弁護士が男性の自宅の登記簿を調べると、完済日であるはずの99年1月に同社が担保に入れていたことが分かった。不動産担保融資で借り換えて取引が続いていたことは明白だった。
アイフルを問いただすと、それ以降の記録が出てきた。改めて計算すると、それまで約70万円残っていた元本は消え、逆に約50万円の過払い状態だった。「こちらが決定的証拠を突きつけるまでは、過払いを隠すのか」。裁判で同社は隠蔽(いんぺい)を否定したものの、昨夏に成立した和解には、返還を求めた過払い金を大きく上回る額の支払いが盛り込まれた。
●業界覆う隠蔽
業者が記録の開示を渋るのは、債務整理に伴う損失をできるだけ抑えたいためだ。取引期間が長いほど過払い金の返還額が膨らむため、古い記録を出さない傾向が強い。三洋信販では8月、顧客に訴えられた裁判で提出した書類の大量改ざんが発覚したが、これは社内文書の保存期間を短く偽り、古い記録を隠そうとしたものだった。
こうした体質は業界を広く覆う。ある大手が00年に作った債務整理への対応手順書は、最新の契約分の記録しか出さないよう指示。別の大手の元役員は「過去3年分しか出すな、と命じたことがある」と打ち明けた。