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●「利息はどんどん増えますよ」
「死に場所を探している。……ごめんな」
昨年10月中旬、埼玉県内で飲食店を経営していた夫(当時54)は妻(45)にそう告げて電話を切った。翌朝、電柱にタオルを巻き付けて首をつっているのを散歩中の通行人が見つけた。遺書はなかった。
妻は昼間、配送の仕事をし、夜は夫の店を手伝い、2人の娘を育てた。
夫の死から3週間後、190万円の振り込みを求める請求書がローン会社から届いた。同社は利息制限法の上限に近い金利で事業者向け融資を手掛けていた。社員からは「利息はどんどん増えますよ」。夫に借金があることは知らなかった。
電話が鳴る度におびえた。3日後、夫の生命保険から、言われるがまま夫名義で全額を振り込んだ。「利息が膨らむことが頭から離れず、早く振り込むことしか考えられなかった」と妻は話す。
●顧客の死、悼む言葉もなく
相続放棄すれば、払う必要がないことを人づてに知った。「相続放棄するから返してほしい」と頼んだが、「本人名義で振り込まれたものは返せない」と拒まれた。
「死人が振り込めるはずがない」と迫ると、「私(が同じ立場)なら払いませんけどね」と冷たい言葉が返ってきた。
同社は、遺族が遺産相続か放棄かを確定させる前に回収はしないとマニュアルで定める。が、交渉の末に返金に応じたのは1カ月後だった。
「ご主人様には、きれいなお取引をいただいていました」。応対した社員に夫を悼む言葉はなかった。同社は「ご遺族の心境をくみ取った対応が不十分だった」としている。
夫が友人に頼まれて車購入のローンの名義人になり、160万円の支払いを肩代わりしていたことが後に分かる。消費者金融からも120万円借りていた。妻は「もっと話を聞いてあげれば……」と、自分を責める。
●「どないしても持って帰らな」
月10万円の生活保護を頼りに暮らす兵庫県の女性(72)は、自分を見下ろす男の姿に、えもいわれぬ恐怖を感じた。男は大手消費者金融の社員。昨年1月、借金の取り立てに突然アパートにやってきた。
当時女性は消費者金融4社に約190万円の借金があった。健康保険証を知り合いに持ち出され、勝手に借金をされたのがきっかけだった。
「どないしても持って帰らなあかん」。部屋は、壁の薄い4畳一間。仕方なく玄関に入れた。
男は頑として居座った。「帰るくらいならわざわざ来ない」。財布から、なけなしの5000円を渡した。男がいたのはおそらく十数分間だが、何時間にも感じられた。震えが止まらなかった。
その後、弁護士の勧めでこの会社を訴えた。「CMでは、親身になって相談にのってくれそうなイメージがあった。でも、違った。私のような人間は、食べるためのお金を持つことも認められないのでしょうか」
http://www.asahi.com/national/update/1017/TKY200610160383.html