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救急出動件数と救急車の台数の推移
「救急車はタクシーじゃないんですけど」。風邪で病院に行くため119番通報され、救急救命士がつぶやくセリフだ。横浜市安全管理局が来年度放送予定のテレビ朝日のシリーズドラマ「救急救命士・牧田さおり」の企画に参加、この一シーンを入れてもらった。
同市では、タクシー代わりとしか思えない通報が相次いでいる。「寂しいから」と1時間、電話をしてくるお年寄りもいる。「緊急性の低い人に対応しているために、重症者にすぐ対応できない例も出ている」と担当者。9月には約2週間、相鉄線の1編成10車両を借り切って啓発ポスターで埋め、救急車の適正利用を呼びかけた。
総務省消防庁によると、05年の救急出動の回数は過去最多の528万422件に上り、10年前に比べ60%近く伸びた。一方で05年の救急車の台数は5641台と、ここ10年で1割程度の増加にとどまった。このため、救急車の現場到着時間の全国平均は、94年の5.8分から05年は6.5分と、遅くなっている。
通報の過半数が入院を伴わない軽症。内容にかかわらず、通報があれば出動する。「どの病院に行っていいかわからない」から始まり、「コンタクトがずれた」(神戸市消防局)、「救急車だと優先的に診てくれると思った」(横浜市安全管理局)など、びっくりする事例は多いという。
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自治体も手をこまぬいていられない。群馬県太田市は3月、救急車の1回当たりの出動経費を算定。どれだけ税金を使っているか、結果を市のホームページや広報紙で公開した。
管轄内の人口が市最多の約15万人に上る太田消防署では、年間で総額1億2918万円かかり、1回当たりの費用は11万7325円に及んだ。うち間違いやいたずらの通報は2850件で、職員が応対するだけで計3925万円かかっていた。
東京都は、緊急でない人に民間の救急搬送サービスを勧めている。昨年4月に設けた「東京民間救急コールセンター」もその一つ。運営する東京救急協会によると搬送は国交省の認可を受けた業者が行う。月平均の配車件数は308件(05年度)。増加傾向だが、料金が割高なのが難点だ。
杉並区に住む団体職員の男性(60)は今年2月、95歳の寝たきりの母親を運ぶのに民間の救急搬送サービスを利用し、驚いた。寝台付きの搬送車を約2キロ離れた自宅と病院を走らせ、料金は2万5200円。「まさかこんなに高くつくとは。お金のない人なら利用しづらい」と振りかえる。
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一方、総務省消防庁は状況を改善するため、専門家による検討会を設置。通報の段階で症状の重さを見分け、緊急性の高い順から優先的に病院に運ぶ「トリアージ」導入を検討している。
消防組織法では「消防の費用は市町村が負担する」と定めており、救急車は個人から料金を取らないのが原則だが、有料化することで出動抑制につなげられないかとする議論も起きている。
有料化議論は過去にも何度かあり、「国民のコンセンサスを得られない」などの理由から見送られてきた。同省は慎重な姿勢をとりつつ、「他の対策を取っても追いつかなければ検討する」としている。
http://www.asahi.com/national/update/1013/TKY200610130262.html