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今年8月、自宅でテレビを見ていると、シュレッダーによる事故を伝えるニュースが始まった。「嫌だ」。さいたま市に住む女性(18)は、とっさにチャンネルを変えたが、ほかの局でも同じニュースが流れていた。
女性は、シュレッダーに左手を挟まれ、5本の指を失った。5歳の時だった。ニュースを目にした女性は、「今更、遅いよ……」。心の中でつぶやいた。
女性はクリスマスが来ると毎年「あれから何年」と数えてしまう。
92年12月25日。埼玉県内の母親の仕事先で友達とどちらが早く紙をシュレッダーにかけられるか競争していた。急いで入れようとした瞬間、左手が巻き込まれた。
父親によると、運ばれた病院で親指は第1関節から、残る4本は根元から切断せざるを得ないと告げられた。母親は「私の手を取ってつけて」。泣きながら訴えた。
痛みの記憶はない。5歳の自分には「どうしてこんなことが起きたんだろう」と不思議なだけだった。女性が巻き込まれたシュレッダーには安全カバーが付いていたが、「紙が入れにくくなる」として外されていた。
女性は事故後1年ほど、左手が怖くて見られなかった。母親が編んでくれた手袋をずっと着けていた。
音楽の授業で同級生と縦笛を吹いても、自分だけ低いドとレの音が出せない。小学生になると指を失った事実を次々突きつけられた。同級生に仲間はずれにされたり、心ない言葉を浴びせられたりもした。
今、大学に通う。が、就職して結婚して……という「普通の人生」が送れるか不安だ。「子どもができても、絶対に手のことを言われるだろうな」
一方で、「強くならなきゃ」とずっと思ってきた。友だちに嫌なことを言われても親には打ち明けなかった。「自分がしたことだから。誰も責められない」と思う。
ただ、相次ぐ事故の報道で、自分と同じ境遇の子どもがいることを知った。女性は「これからはもう誰も犠牲にならないようにしてほしい」。
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経産省は女性の事故について5日付で報告を受けた。このシュレッダーをキヤノンマーケティングジャパン(旧キヤノン販売、東京)から生産委託(OEM)されていた明光商会(東京)は「社内に書類がなく詳しい事実関係の把握に時間がかかった」としている。
http://www.asahi.com/national/update/1007/TKY200610060382.html