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[参院定数判決]「軽視できない最高裁の警鐘」
国会へのメッセージということでは、最高裁としてこれまでより、一歩踏み込んだ判決だったのではないか。
議員1人当たりの有権者数の格差が最大で5・13倍だった2004年の参院選挙区選について、最高裁大法廷は結論では合憲としながら、「制度の枠組みの見直しも含めて検討することが憲法の趣旨に沿う」と、異例の注文を付けた。
参院選挙区選の選挙制度は、区割りを都道府県単位とし、各選挙区の定数を偶数にしている。
参院選の1票の格差をめぐっては、過去6件の大法廷判決が言い渡されている。その中で、多数意見が制度そのものの見直しに言及したのは初めてだ。
01年の参院選をめぐる04年大法廷判決は、都道府県単位の選挙区と定数の偶数制は「相応の合理性がある」とした。だが、今回は、多数意見で制度の枠組みの見直しを注文したのに加え、2人の裁判官が個別意見の中で、具体的に現行の区割りと偶数配分制の改正を求めた。
現在の都道府県別の人口を前提として、参院選で現行の枠組みを維持する場合、「1票の価値」の平等を実現するのは極めて難しい。
憲法は3年ごとの半数改選を定めている。各都道府県の定数を最低2人とし、人口に比例して定数を割り振ると、人口が最少で約60万人の鳥取県は定数2人、約1200万人の東京都は40人となる。選挙区選の総定数を400人以上にしないと、格差をゼロにできない。
異例の注文は、最高裁が投票価値の平等に重きを置いたことの帰結だ。
ただ、04年大法廷判決は、定数の偶数配分を改めて1人区を作ると、投票機会の平等の観点から「憲法上の疑義が生じかねない」と指摘している。「制度の枠組みの見直し」にあたっては、十分な配慮が必要になろう。
今回、最高裁が04年の参院選を合憲としたのは、問題の選挙後ではあったものの、国会が先の通常国会で「4増4減」の定数是正を実現したことを評価した結果である。だが、それだけで良しとしたわけではない。
扇議長も4増4減の定数是正を「小規模の改正」とし、今年2月、参院各会派でつくる参院改革協議会に、2010年の参院選に間に合うよう抜本改革案の検討を指示した。しかし、その後、抜本改革について話し合われたのは2回だけで、動きは極めて鈍い。
選挙制度の枠組みを変えるのは容易でないが、現状のままでは、参院への有権者の信頼も損なわれる。