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登記官が偽造書類を見抜けずに誤って作成した柏市内の土地の登記を信じたために不動産詐欺に遭ったとして、茨城県那珂郡の70歳代の女性が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審が東京高裁であり、昨年7月、「登記官の過失」を認定する内容の判決が言い渡された。ただ、女性の言い分も不自然だとして国の賠償責任については認めず、結果的に敗訴となった女性側は猛反発。裁判官の訴訟指揮などに過失があったとして、国に1億1000万円の支払いを求める新たな国家賠償請求訴訟を水戸地裁に起こす異例の展開になっている。
第1回口頭弁論は26日に開かれる。日弁連などによると、裁判官の過失を理由とした損害賠償請求訴訟は、刑事裁判の再審無罪事件に絡んだケースでは例があるものの、民事や行政訴訟では極めて珍しい。
訴えによると、女性は1998年5月、東京都港区の不動産会社から柏市の山林約4100平方メートルを「路線価は5、6億円だが、現金払いなら2億円でいい」と購入するよう勧められ、千葉地方法務局柏支局作成の登記を確認した上で、1億8500万円で売買契約を交わした。
しかし後日、売り主の不動産会社には山林の所有権がなく、偽造の印鑑証明などによって誤って登記されていたことが判明。女性は、姿を消した社長らを詐欺罪で県警に告訴する一方、「登記官の過失で損害を被った」として2000年8月、国に2億2000万円の賠償を求める訴訟を起こした。
「登記官の過失」の有無が争われ、1審・水戸地裁は4年半の審理の末に女性の訴えを棄却したが、控訴審では1審判決を取り消して登記官の過失を認定。だが一方で、「女性がこれだけの大金をいかに用意したか疑問で、(振り込みではなく)直接支払ったというのも不自然」などと指摘し、女性側が提出していた領収証などの証拠力を認めず、賠償請求を退けた。
今回の訴訟で女性側は、〈1〉「不自然」という裁判官の見方だけで土地売買の存在を否定するのは、自由心証主義の乱用にあたる〈2〉売買・被害の存在に疑問があるのであれば、その点について当事者に説明を求めるべきなのに、当事者に立証の機会を与えないまま判決を出した——として、「裁判官の過失」を主張している。
女性側代理人の山形学弁護士(茨城県弁護士会)は「これが公正・公平な訴訟指揮と言えるのか、あえて訴訟という形をとり、公の場で検証したいと考えた」と説明。国側(法務省)は「現段階ではコメントできない」としている。