2006年09月24日(日) 03時06分
<交通違反保険>最大手が廃業 金融庁が営業認めず(毎日新聞)
駐車違反など刑事罰に至らない交通違反の反則金を補償する無認可共済「全日本交通相互保障協会」(静岡県浜松市)が、自主廃業することが23日、分かった。4月の改正保険業法施行で無認可共済も規制対象になり、金融庁が「何度違反しても保険で賄えるため交通違反を助長しかねない」として、営業を認めない意向を伝えていた。ただ、全国に100前後ある同協会のフランチャイズ(FC)業者には規模が小さく同法の対象にならない業者も多数あるとみられ、金融庁は対策に苦慮している。
関係者によると、同協会は今月4日に解散を決議し、清算手続きに入った。同協会は、既加入者への補償は続けるとしている。
同社は82年設立で、反則金保険分野の最大手。入会金2000円、年会費6000円を払えば、契約期間中(1年間)何度でも反則金の全額にあたる保険金を支払う「ライセンス保険」を販売していた。反則金は普通車の場合、駐車違反で最高1万8000円、スピード違反は高速道路で同3万5000円、一般道で同1万8000円、赤信号無視は9000円など。6月に駐車違反取り締まりが強化されたのを受け、全国的に加入者が急増し、同協会本体だけで数千人、FC業者を含めると約10万人が加入している。
無認可共済は、農業協同組合法に基づくJA共済などと違って根拠法がないため、保険と同様の金融商品を扱いながら認可を必要としなかった。しかし、改正保険業法で、加入者が1000人を超える場合は規制対象になり、9月末までに金融庁へ届け出なければならなくなった。さらに、金融庁が「反則金保険は公序良俗に反する保険を禁じた保険業法に抵触する可能性が高い」との見解を非公式に示したことから、業務の継続は困難と判断。届け出期限を前に解散を決めたという。
同協会のFC業者は独立採算制だが、保険金支払いの一時肩代わりなど同協会の支援を受けていた業者もあり、影響が広がる可能性がある。
ただし、FC業者の多くは加入者が1000人以下のため、規制対象にならず、反則金保険事業の継続は可能。金融庁も打つ手を見いだせず、結果的に「公序良俗に反する可能性が高い」保険を黙認せざるを得なくなりそうだ。【清水憲司】
■解説
金銭的なペナルティーで交通違反を抑制するという反則金の効力をそぎかねない反則金保険に対しては、警察庁が「好ましくない」との見解を示していたが、改正保険業法施行までは、規制する法律がなかった。交通違反への世論の批判が厳しさを増す中、金融庁は長年の懸案解決に向けようやく一歩を踏み出した。
全日本交通相互保障協会は「加入者の違反率が未加入者に比べ高いわけではない」「減点という制裁があり、違反の助長にはならない」などと反論してきたが、金融庁の判断は変わらなかった。
今後の焦点は、同社のFC業者の対応。保険金の運用や支払いなどの業務を独立して行っているため「本部が廃業しても事業継続には支障がない」(東京都内の有力業者)という声が強い。同協会の経営支援がなくなり、信用力が低下することに対しては、FC業者が共同で本部機能を持つ団体を新設し、支え合う案を検討しているという。
同協会と同様の商品を販売している無認可共済のうち、加入者1000人超の業者の中には、分社化して1社あたりの加入者を規制の1000人以下にして法規制の網から逃れる「対策」を検討する動きも出始めた。現行規定のままでは、同様の規制逃れが相次ぎ、当局と業者の「イタチごっこ」が続くおそれも否定できない。【坂井隆之】
(毎日新聞) - 9月24日3時6分更新
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