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PTAのママさんバレーで小学校にいると告げると、女児は「自転車で学校に行く」。「何かあったらママに連絡するのよ」と言う母に、「わかった」と返して電話を切った。それが、最後のやりとりになった。
姿を現さないのを不審に思った母親は、自宅付近や通学路を捜し歩いた。母親から「帰ってこない」と電話を受けた父親(32)もまた、急いで帰宅し、駐車場や土手などを、必死の思いで捜し回った。
不安と焦燥を募らせていた午後八時すぎ。母親の携帯に届いた「娘はもらった」のメール。「元気でいて」との願いもむなしく、深夜になり、警察から「娘さんらしい遺体が発見された」と連絡が入った。
警察で遺体の白い布がめくられると、父親は「すぐに娘とわかった」という。その瞬間、「ただ悲しく、抜け殻のようで…人生が終わってしまったかのような気がしました」。第八回公判の意見陳述で、父親はそう振り返った。
母親も、同じく意見陳述し、「認めたくない気持ち」でいたが、遺体が身に着けていた「私が書いた名札」に、わが子である現実を突き付けられたことを語った。
ほんの十日前に七五三を迎え、絵馬に「かんごしになる」と将来の夢を書いていた。数日前には七歳の誕生日を祝い、ケーキのろうそくを笑顔で消したばかりでもあった。
葬儀場で再会した時。「よく寝た」と言って起き出しそうな娘に、母親は「起きて。『ママ、ただいま』と言って」「怒られるのが嫌で寝たふりしてるの? 怒らないから起きて」と心の中でずっと、語りかけていたという。
二歳だった妹は「かえちゃんねんね?」と聞き、母親は、どう教えていいかわからないまま、「そうよ」と答えた。「大きくなったら、パパと結婚する」。そう言っていた娘のために、母親は結婚指輪を棺(ひつぎ)に入れた。
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両親は「真実を知りたい」と、約一年二カ月の十回にわたる公判をすべて傍聴した。意見陳述では、場当たり的な受け答えをする小林被告を「反省も後悔もしているようにみえない」と話し、「極刑以上の刑」を求めた。
全国犯罪被害者の会(あすの会)の安丸和夫さん(59)=大阪府高槻市=は、自身の身に重ね合わせ、公判を傍聴してきた。安丸さんは三歳のとき、当時八歳だった姉を、性犯罪の末に殺害されている。
公判の最中にも、広島や栃木で女児が殺される事件が相次いだ。「子どもの人間としての尊厳を無視し、身勝手な欲望の対象にするこうした犯罪には厳罰を」と訴える。
奈良の事件では、小林被告は被害者を殺害したのみならず、遺体を屍姦(しかん)目的で傷付けている。「遺族のつらさ、苦しさはどれほどのものか」
安丸さんはまた、十年前に当時十四歳だった息子を信号無視のトラックにひかれ、失っている。奈良事件の女児の父親は「娘は七歳のまま。時間は止まったままなのです」と嗚咽(おえつ)したが、自身の胸にも、中学生のままの息子さんの姿があるという。
「成長しないわが子の姿とともに、残された人間はずっと、家族を突然奪われた悲しみを胸に抱えていく。そしてその悲しみは生涯…自分が生きている間、続くのです」
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060919/ftu_____kur_____000.shtml