2006年09月16日(土) 12時02分
オウム裁判:松本被告・死刑確定 松本サリン・河野さん「被害者には通過点」 /長野(毎日新聞)
「地下鉄サリン事件」などで殺人罪などに問われたオウム真理教(アーレフに改称)の松本智津夫(麻原彰晃)被告(51)の死刑判決が15日、確定した。「松本サリン事件」の被害者である河野義行さんや、事件現場となった松本市の住民の声などを聞いた。
松本サリン事件の被害者である河野義行さん(56)は、松本被告の死刑判決確定について「刑事裁判にとっては終着駅となるが、被害者にとっては通過点に過ぎない」と心境を述べた。河野さんはサリンの影響で意識不明の状態が続いている妻澄子さん(58)に「(松本死刑囚の)死刑判決が確定したよ」と報告すると、澄子さんは目を見開いて、大きく呼吸したという。河野さんは「私の話を聞いて、反応したと思っている」と話した。
河野さんは「死刑が確定しても、妻は意識不明のままだし、亡くなった人たちも生き返るわけではない。私にとって事件の終着駅は、妻が回復するか、亡くなるかのどちらかだ」と話した。控訴審が一度も開かれなかった裁判については「何も分からずに終わってしまった。(松本死刑囚)が黙秘権を行使したのか、しなかったのかさえも分からない。あれだけ被害が出たのに、真実が分からなかったことは残念」と述べた。今後については、「今まで通り、妻の介護と講演活動を行っていく」と話した。【藤原章博】
◇「分かりません、取材は本部に」−−小諸の教団施設
県内には信者などが生活している教団の施設が松本市と小諸市にある。小諸市加増の小諸道場では、信者と思われる男性が「留守番の者で何も分かりません。取材は東京の本部に聞いてください」と、ドア越しに答えるだけだった。【藤澤正和】
◇「死刑確定、遅過ぎた」−−松本サリン現場の住民
事件の舞台となった長野県松本市北深志の住宅地にあるマンション付近の住民は、松本被告への憤りを語った。押し花絵教室を経営する熊谷明子さん(71)は「死刑は当たり前。確定するのがちょっと遅過ぎたのではないのか。何の罪もない人を殺したのだから。多くの人を傷付け、許せない。当時は精神的に参った。裁判でも何も語らないのは自由かもしれないが、せめて謝罪をすべきだ」と話す。近くに住む主婦(90)は「死刑は当然。早く執行してほしい。自分は被害に遭っていないが、河野さんや被害者のことを考えるとかわいそう。顔も見たくない」とした。【福田智沙】
◇知事「当然のことと思う」
オウム真理教(アーレフに改称)の松本被告の死刑が確定したことについて、松本サリン事件の舞台となった県内でもさまざま声が聞かれた。
松本サリン事件の現場近くで幼少時代を過ごしたという村井仁知事は「風向きが変わっていれば、友人たちも命を落としたかもしれない、りつ然とする事件だった。その張本人に死刑となることは、当然のことと思っている」と話した。また、国家公安委員長を務めた経験を踏まえ、犯罪抑止や遺族感情への配慮から「死刑制度の存続は妥当」との考えを示した。
菅谷昭・松本市長は「松本死刑囚の理不尽な行為により、今なお後遺症に苦しんでいることを考えると、改めて怒りを覚える。市としては、事件を風化させることのないよう、危機管理を最重要施策として取り組む」とした。松本サリン事件当時、松本市長だった有賀正・前市長は「裁判に時間がかかり過ぎていた。死刑はやむを得ないと思う。死刑が確定したことで、一連の事件に一つの区切りがついたと感じる」と話した。
また、河野さんの弁護を担当した永田恒治弁護士は「長い時間をかけたにもかかわらず、裁判を通じて松本サリン事件を含めた(松本死刑囚が関与した)事件の実態が解明されなかったことは残念だ」と話した。【藤原章博、川崎桂吾、武田博仁】
9月16日朝刊
(毎日新聞) - 9月16日12時2分更新
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