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「5000円ポッキリ飲み放題、いかがですか」
午後6時。ダイアナが開店すると、ホステス4人が客引きを始める。
目を付けるのは「酒の入った1人客」。阿部被告は「年配で初めての客を狙った」と供述している。
店に誘い込むと、まず客の周りを、3人のホステスが囲む。「ごちそうになっていいですか」とホステスは次々に飲食物を注文。客が高額請求を心配して動揺した様子をみせると、キャッシュカードでの決済を勧め、暗証番号を聞き出す。客の氏名や暗証番号が書かれたメモや紙ナプキンは、2店合わせて約220人分押収されており、それも昨年以降のものにすぎない。
現金引き出し役の阿部被告は、客から依頼された金額の数万円を下ろして客に渡すが、この際、残高もすべて引き出してしまう。中には1回来店しただけで約630万円の被害にあった客もいた。
店ではホステスらが引き出した総額を請求書の合計欄に書き込み、帳尻を合わせる。ドンペリ35本175万円、オードブル20皿24万円……。客には身に覚えのない注文だった。
ダイアナが午前0時に閉店すると、続いて開店するスカイラークへ移動。元ホステスの郷家、阿部両被告は協力し合いながら、荒稼ぎしていた。
調べでは、約10年前に開店した同店は2003年ごろから「ぼったくり」を続けていた。他の飲食店主らも「国分町では有名な店」と口をそろえる。その一方で、「ぼったくりが常態化しているのに、なぜ取り締まらないのか」(30歳代飲食店主)との疑問の声も。
仙台中央署には数年前から約30件の相談が寄せられていたが、泥酔させられる手口のため、相談者の記憶が立件の大きな壁となった。多額の金を盗まれても、店の名すら覚えていない客も。「被害にあったのはおそらくここだとわかっていても、『多分』では立件できない」(捜査幹部)。風営法に基づく立ち入りも行ったが、許可を得て営業、店の価格表も請求書の記載額と一致するため、捜査は難航した。
ところが、今年2月、店での記憶が鮮明な客が現れた。被害の翌日、店を訪ねたところ、客引きのホステスを見つけ、路上でもみ合いになり、署員が駆け付けた。このホステスは客の現金が引き出されたキャッシュコーナーの防犯ビデオに映った女と同じ人物だった。これが捜査の突破口となり、「客がごちそうしてくれた」と、これまで否認し続けていた郷家、阿部両被告も「申し訳ない」とついに容疑を認めた。
6月に発足した特別対策隊隊長の清野薫・仙台中央署刑事官は「この事件は特別対策隊にとって大きな懸案だった。今後も再発防止のため、客引きを徹底的に取り締まる」と話している。