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[灰色金利撤廃]「『特例』容認で骨抜きにするな」
「特例」の名の下で、グレーゾーン(灰色)金利撤廃を骨抜きにしてはならない。
金融庁が、貸付金利の上限引き下げなど、貸金業制度の改革案を自民党に提示した。今秋の臨時国会に、貸金業規制法などの改正案を提出したいとしている。
年20〜15%と定められている利息制限法の上限金利と、年29・2%で、超えると刑罰の対象になる出資法の上限金利との間が、灰色金利だ。法的には無効とされうる利息だが、一定の条件を満たす場合には認められてきた。
多くの消費者金融業者などが灰色金利で融資し、その重い返済負担が多重債務者を生む原因になっている。このため、出資法の上限金利を引き下げ、灰色金利を撤廃するのが、制度改革の柱だ。
だが、経営への打撃を懸念する業者や自民党の一部から、新制度でも、特例で上限を超える金利を認めよ、との声が上がった。「金利を下げると信用力の低い顧客には貸せなくなる。業者も、借りられなくなる人も困る」という理由だ。
金融庁も「少額短期の貸し付けなら、高金利でも返済負担は重くならない」と特例を容認する案をまとめた。
個人向けは「返済期限1年以内で50万円まで」または「同半年以内で30万円まで」の範囲内でなら、同時に3社まで年28%の金利で貸せるようにする。他社も含めて既存の借り入れがない顧客だけが対象で、上限金利の引き下げ後、最長5年程度の時限措置にするという。
だが、改革案は一方で、改正法の施行後、3年程度かけて上限金利を引き下げるとの経過措置を設けている。特例の容認期間を合わせると、8年間も灰色金利が温存されることになる。金利引き下げの効果は、それだけ薄れる。
自民党からは、特例の終了時に改めて存廃を見直すことができるようにしようとの意見さえ出ている。特例が、やがて特例でなくなる恒久化の危険がある。
大手消費者金融業者の新規平均貸付額は20万円に満たない。ほとんどの新規融資が、特例の対象になりかねない。既存の顧客に他人から名義を借りさせ、特例を悪用して追加融資するような“裏技”が出てくるのも心配だ。
そもそも、借り手側に「高い金利でも借りたい」という特例へのニーズが、どれほどあるかにも疑問が残る。
安易に高利の借金に手を出し、多重債務に陥る人を減らす。そうした改革の狙いを見失ってはなるまい。金融庁と自民党は、業者の都合ではなく消費者の視点に立って、特例容認の是非を慎重に考えるべきだ。