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調査したのは、泉南を管轄していた大阪府尾崎保健所。79〜81年、住民対象の巡回検診で集めた胸部エックス線写真2万6743枚を分析した。石綿を吸い込んだ人にできる「胸膜プラーク」が見つかったのは132人。うち117人に職業歴や居住歴などを聞き取った。その結果、石綿工場や建設業などの職業性暴露が60人。「父や母・姉が石綿工場に勤務したことがあり、その衣服や持ち帰った袋などを介して石綿を吸った」家族暴露が8人。工場近くに住んでいたために吸った人は19人だった。
調査報告書は、胸膜プラークがあれば、肺がんで死ぬ危険性が高いことを指摘、「フォローアップが必要である」と提言していた。
医師としてこの調査に携わった森永謙二・産業医学総合研究所部長によると、環境暴露被害についてはヨーロッパでの調査によって60年代から認識が深まり、日本での実態をつかむために、全国一の石綿産業集積地である泉南で大規模調査を実施したという。
調査結果は、83年に西ドイツ(当時)であった第6回国際じん肺会議など国内外の三つの学会などで発表された。
しかし、住民の健康対策にどう生かされたかは不明だ。尾崎保健所は04年廃止。業務を引き継いだ泉佐野保健所は、石綿関連資料は学会発表や調査報告書すら保管しておらず、「廃棄された可能性が高い。当時、どんな石綿対策がとられたか全く分からない」としている。
大阪じん肺アスベスト弁護団の村松昭夫副団長は「地域に広がる健康被害を国や行政が早くから知っていた重要な証拠として裁判に提出する」と話す。
石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長は「石綿に関する資料は、各地にバラバラになっている。命や健康にかかわる資料は、行政が文書保存期間を超えて残し、誰もが簡単にアクセスできるようにするべきだ」と話している。