2006年08月31日(木) 13時02分
ニュースワイドとちぎ:税源移譲 徴収率低く「困った!」 滞納対策強化へ /栃木(毎日新聞)
◇消費者金融の活用論も
三位一体の改革で来年度から、3兆円規模の所得税(国税)が地方税の個人住民税(個人県民税と同市町村民税)に移譲される。本県では、住民税分で500億円近い税源移譲になると試算されている。「金も権限も地方に」という改革の趣旨で、本来は歓迎すべきはずだが、税源が増える分、国庫補助負担金が減らされる。税の徴収率をアップさせなければ、県と市町の財政を直撃する事態に、首長からは「このままでは持ちこたえられない」と、悲鳴も上がり始めた。【沢田石洋史】
「消費者金融がもうかっているのは、返してもらえるからだ。(消費者金融の職員を)臨時採用できないのか」
県内自治体のトップが集まった28日の「政策懇談会」。吉谷宗夫・足利市長が切り出すと、県幹部は返答に困った。「臨時職員の場合、立ち入り調査や差し押さえなど公権力の行使は出来ないが、(税金を)預かってくることは可能かと……」
議題は「市町村税収入確保のための検討課題」。地方税法では、個人県民税の徴収は原則として市町村が行うと規定している。このため、個人市町村民税の徴収率は県財政に直結する。しかし本県は04年度、徴収率が全国ワースト9位の89・5%。過去10年では、95年度の91・8%から低下傾向にあり、固定資産税などを含む全市町村税ではワースト4位というのが実情だ。
県によると、来年度の税源移譲額は、個人県民税分として314億円、個人市町村民税分が177億円と試算されている。04年度の徴収率(現年度課税分=97・2%、滞納繰越分=15・7%)のままだと、来年度は県分で8・8億円、市町分で5億円が徴収できない計算となる。5年後の11年度は県分で32・2億円、市町分で18・3億円に拡大するため、事態は深刻だ。
「こんなモノ、移譲してもらわなくたっていい」。政策懇談会の約1カ月前、県議会の財政健全化対策特別委員会でこの数字が示されると、委員の一人は極論を展開した。「国税が市町村民税になると、(納税者に)ばかにされ、徴収率も上がらなくなるのではないか」
実際、県が04年度分を対象に調査した結果、5自治体が滞納者への差し押さえを1件も行っていなかったことが分かった。公売ゼロも8自治体に上った。「このままでは、滞納者が得をするだけだ」と、県は今年度から「市町村支援チーム」を発足させ、徴収ノウハウの伝授に力を入れている。
県が7月、33市町を対象に行ったアンケートでは、27市町が「住民の納税意識が低下している」と回答し、24市町が「徴収事務に精通した職員が不足している」と答えており、効率的な組織づくりが課題となっている。このため県は、税源移譲に備え、県と市町の「協働による事務執行組織」を来年度に発足させ、滞納整理などを強化したい考え。具体的な形態は年内に決める方針だ。
消費者金融の活用論は棚上げされたが、住民サービスの低下を招かないよう、税収確保策は「待ったなしの課題」(福田富一知事)であることが浮き彫りとなった。
8月31日朝刊
(毎日新聞) - 8月31日13時2分更新
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060831-00000119-mailo-l09