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4月下旬、都内にある通信関係の業界団体で、会員企業あてに随時送っている一斉メールのうち4、5通が突然届かなくなった。原因を調べると、企業側のメールサーバーが利用する米国のブラックリストに、この団体のIPアドレス(ネット上の住所)が登録されていたと判明。翌日にはリストから抹消されて元通りになったが、「迷惑メールなんて出したことはない。なぜ登録されるのか」と担当者はいまだに納得できずにいる。
インターネット接続業者大手ニフティの木村孝担当部長によると、ブラックリストは、メールサーバーの迷惑メール対策ソフトが参照する情報源。米国を中心に様々な人たちが作り、約40種類がネット上で無償公開されている。迷惑メールの発信元IPアドレスを1件ずつ登録するのが本来の姿だが、余りの多さに手を焼いて、途中まで同じIPアドレスをまとめて登録するリストもあるという。
接続業者は多数のIPアドレスを自らや企業、団体のメールサーバーに割り当てている。このため、だれかが接続業者を通して迷惑メールを出すと、途中まで同じIPアドレスを持つ「無実」の企業や団体まで巻き添えに登録されることがある。いわば、東京都中央区築地5丁目発の迷惑メールを締め出すために、築地や中央区発のメール全体の受け取りを拒否するような状態だ。
こうしたメールの不達は社会問題になるほど頻繁ではないが、今年前半から増えている、と木村さんはみる。国内でもリストの利用が広がったためらしい。不達になったこと自体に気づかないケースもあり、「大事なメールの返事がない時は、別の手段で相手に確認した方がよい」と言う。
大手接続業者は、短時間に送信できるメール数を制限したり、送信元を認証できないメールをブロックしたりする封じ込め技術を導入しているが、迷惑メールの送り手は、ウイルス感染させた他人のパソコンから送信させる手口などで対抗する。和製リスト「RBL.jp」を運営する鈴木忠さんは「ブラックリストはなくなるのが理想だが、少なくともしばらくは必要だ」という。
とはいえ、海外には、アジア全体を登録したままにしたり、抹消時に供託金を要求したりする厄介なリストも存在する。
接続業者ぷららネットワークスの技術者、赤桐壮人さんは「日本から迷惑メールを出させないよう対策を強化することが、必要なメールを確実に届けることにつながる」と訴えている。
〈迷惑メール〉 頼みもしないのに送られてくる広告や宣伝などのメール。電子メールの利便性を逆手にとり、不特定多数あてに大量発信される。広告に反応する率がわずかでも、送信コストが安いため、ビジネスとして成立していると言われる。情報セキュリティー会社ソフォスによると、世界全体の迷惑メールのうち日本発は約2%。米中からの発信が約4割を占め、総数は増え続けている。