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2006年08月26日(土) 01時45分

8月26日付・読売社説(1)読売新聞

 [不正輸出]「国の安全を脅かす悪質商法」

 大量破壊兵器の拡散を防ごうとする国際社会の努力を無に帰す重大な犯罪だ。

 精密測定機器メーカー大手のミツトヨによる外為法違反事件で、同社社長や輸出部門の責任者だった副会長らが逮捕された。

 核兵器開発にも使える三次元測定機2台を、経済産業相の許可を受けず、2001年にマレーシアの同社現地法人に不正輸出した疑いだ。

 1台はリビアに運ばれていた。「核の闇市場」を作ったとされるパキスタン人の核開発研究者、カーン博士が関係する会社が仲介したこともわかっている。

 この2年後、国際原子力機関(IAEA)が、核開発を放棄したリビアの核査察に入り、問題の測定機を発見した。ミツトヨは、発覚することはないと高をくくっていたのだろうか。

 さらに、核開発を進めているイランにも別機種の精密測定機や関連のソフトウエアを不正に輸出していたという。

 経産省はリビア、イラン、北朝鮮、イラクの4か国を「懸念国」とし、大量破壊兵器の開発にも使える高度技術などの輸出を特に厳しく規制している。

 ミツトヨは精密測定機の製造では国内のトップ企業だ。世界でのシェアも約30%を占めている。

 このような代表的企業が、三次元測定機の性能データを輸出規制の数値以下に低く見せかけて、許可申請が不要なように装い、輸出管理の規制をくぐり抜けていた。しかも、社長自らが関与していたというのだから悪質だ。

 警視庁によると、約1万台が、同様の手口で不正輸出された可能性があるという。懸念4か国に大量に輸出されたということはないのか。警視庁には、さらに全容の解明を期待したい。

 国連安全保障理事会は、大量破壊兵器の拡散を防ぐため、全加盟国に関連物資の厳格な輸出管理を求めてきた。経産省も輸出貿易管理令を改正するなど規制を強め、企業に警告を発してきた。

 しかし、不正輸出事件が絶えない。ヤマハ発動機が軍事目的にも使える無人ヘリコプターを中国に不正輸出した事件の捜査も継続中だ。生物兵器製造に使える凍結乾燥機を北朝鮮に不正輸出した事件も摘発された。この事件では、台湾経由の第三国ルートが使われた。

 北朝鮮が核実験の準備に入ったという情報がある。北朝鮮にとって、日本は核関連技術や資機材の主要な調達先だったとされる。不正輸出は国の安全を脅かす重大犯罪である。経産省、税関、警察なども連携して、さらに監視を強化していかなければならない。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060825ig90.htm