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EWSは、就寝時などでも国民に災害情報を伝えられる仕組みとして、85年に始まった。放送局側からの識別信号でテレビ・ラジオを起動し、警報音で注意を喚起したうえで災害情報を伝える。
NHKは毎月1日、正午前に総合テレビやFMラジオで「ピロロロ」という信号音を流す試験放送をしており、民放もテレビ・ラジオ45社がシステムを備えている。
●普及1%下回る
だが、これに対応するテレビやラジオはほとんど出回らなかった。総務省の調べでは、01年末の段階で、出荷された対応機は約50万台。85年以降のカラーテレビ、ラジオの総出荷台数合計は2億760万台なので、0.002%という計算だ。
自動起動には待機電力が必要で、常時コンセントを差しておかねばならず、省エネ志向に反するとして必須機能にはなっていない。数機種つくられたが割高だったこともあり結局、普及しなかった。いずれも現在は生産されていない。
●地デジも期待薄
総務省は地上デジタル放送開始にあたり、技術基準を検討。EWSの仕組みを残したが、自動起動機能の義務化はなかった。
デジタルテレビで国内販売シェアのほとんどを占める13社に朝日新聞が聞いたところ、ソニーから1機種2型が出ているのみ。これまでの出荷台数は数万台。デジタルテレビ・チューナーの出荷累計1190万台(6月末現在)のほんの一部だ。
●待機電力が問題
製造をためらう理由として、各社は待機電力の問題を挙げる。「市場から強い要望はない」(三菱電機)、「価格が上がってしまう」(船井電機)という声もあった。
東海地震に備える静岡県は昨年、自動起動を地上デジタル受信機の必須機能とすることを「制度化」するよう国に要望した。防災政策課は「業界団体と国で話し合い導入して欲しかった」。総務省地上放送課は「自主性にゆだね、義務化は難しいが、メーカーに働きかけていきたい」と話す。
〈緊急警報放送〉 85年、電波法の運用規則改正で始まった。東海地震の警戒宣言▽津波警報▽災害対策基本法に基づく知事などの要請——の三つの場合に放送される。87年の宮城県沖地震での津波警報時以来、これまで13回放送されている。
〈井野盛夫・富士常葉大教授(防災行政)の話〉 EWSは、災害に備える際の有効な伝達手段。義務化は難しいだろうが、行政や放送局側としては、こうしたシステムがあることをもっと宣伝・周知することが必要だ。関心が高まりニーズが増えれば、メーカーの参入を促すことにつながる。
http://www.asahi.com/national/update/0820/TKY200608190404.html