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2006年08月20日(日) 17時20分

自動電源で受信の緊急警報放送、空回り 対応機種わずか朝日新聞

 大災害時に放送局からの信号で自動的にテレビやラジオの電源が入る「緊急警報放送(EWS)」。放送各局が電波を出し続け20年を超えるが、これに対応するテレビは、実はほとんどつくられていない。防災関係者は、地上デジタル放送開始を契機に普及が進むことを期待したが、非対応のテレビが出荷され続けている。

 EWSは、就寝時などでも国民に災害情報を伝えられる仕組みとして、85年に始まった。放送局側からの識別信号でテレビ・ラジオを起動し、警報音で注意を喚起したうえで災害情報を伝える。

 NHKは毎月1日、正午前に総合テレビやFMラジオで「ピロロロ」という信号音を流す試験放送をしており、民放もテレビ・ラジオ45社がシステムを備えている。

 ●普及1%下回る

 だが、これに対応するテレビやラジオはほとんど出回らなかった。総務省の調べでは、01年末の段階で、出荷された対応機は約50万台。85年以降のカラーテレビ、ラジオの総出荷台数合計は2億760万台なので、0.002%という計算だ。

 自動起動には待機電力が必要で、常時コンセントを差しておかねばならず、省エネ志向に反するとして必須機能にはなっていない。数機種つくられたが割高だったこともあり結局、普及しなかった。いずれも現在は生産されていない。

 ●地デジも期待薄

 総務省は地上デジタル放送開始にあたり、技術基準を検討。EWSの仕組みを残したが、自動起動機能の義務化はなかった。

 デジタルテレビで国内販売シェアのほとんどを占める13社に朝日新聞が聞いたところ、ソニーから1機種2型が出ているのみ。これまでの出荷台数は数万台。デジタルテレビ・チューナーの出荷累計1190万台(6月末現在)のほんの一部だ。

 ●待機電力が問題

 製造をためらう理由として、各社は待機電力の問題を挙げる。「市場から強い要望はない」(三菱電機)、「価格が上がってしまう」(船井電機)という声もあった。

 東海地震に備える静岡県は昨年、自動起動を地上デジタル受信機の必須機能とすることを「制度化」するよう国に要望した。防災政策課は「業界団体と国で話し合い導入して欲しかった」。総務省地上放送課は「自主性にゆだね、義務化は難しいが、メーカーに働きかけていきたい」と話す。

 〈緊急警報放送〉 85年、電波法の運用規則改正で始まった。東海地震の警戒宣言▽津波警報▽災害対策基本法に基づく知事などの要請——の三つの場合に放送される。87年の宮城県沖地震での津波警報時以来、これまで13回放送されている。

 〈井野盛夫・富士常葉大教授(防災行政)の話〉 EWSは、災害に備える際の有効な伝達手段。義務化は難しいだろうが、行政や放送局側としては、こうしたシステムがあることをもっと宣伝・周知することが必要だ。関心が高まりニーズが増えれば、メーカーの参入を促すことにつながる。

http://www.asahi.com/national/update/0820/TKY200608190404.html