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■お宝分析
「苦情のなかに宝がある。それを分析して経営改善につなげる」
三井住友海上の江頭敏明社長は今月上旬、本紙の取材に応じ、顧客の苦情や意見、問い合わせをまとめる「お客さまの声担当部」を新設する理由を説明した。全国から寄せられる顧客の声を分析し、商品の見直しや開発、業務の問題点改善などに役立てる考えだ。
同社は六月、医療保険など「第三分野」商品の不当な不払いや、自動車保険の特約部分に膨大な支払い漏れがあったとして、第三分野商品の無期限販売停止や、新商品の認可の最長一年停止など厳しい処分を受けた。複雑化する商品の開発と販売、支払い部門がうまく連動せず、経営陣もコントロールできなかったことを同社も認める。
顧客の相談窓口は従来もあったが、縦割りの壁は高かった。苦情には担当セクションや各支店が個別に対応し、全社的な情報の共有はなかった。同社関係者は「顧客の声をトータルで把握し、対応していたら、ここまで深刻な問題にならなかった」と悔やむ。
同じ損保業界では、保険金の支払い漏れなど広範囲の法令違反で、損保ジャパンも一部業務停止の処分を受けた。同社は業務改善計画で、「お客さま相談室」を新設して顧客の声を集中管理する方針を打ち出した。
一方、不適切な保険金不払いが問題となった明治安田生命は、苦情などを分析する専門部署として昨年末、「お客さまの声統括部」を新設した。各社とも苦情の内容や分析結果を経営陣が把握して問題点の改善を指示するほか、第三者のチェックを入れ定期的に公表する方針だ。
■護送船団
顧客の声を経営改善に生かすという考え方は、決して新しくない。国民生活センターによると、自動車や家電業界など製造業で早くから取り組んでいる。
独自のシステムをつくり商品開発に活用している例としては、花王の「花王エコーシステム」や資生堂の「ボイスネットC」がある。商品の問い合わせを中心に、苦情や意見などが年間十二万−十三万件集まる。花王の場合、「シャンプーとリンスの区別がつきにくい」という声を受け、シャンプーの側面に刻みを入れ、それが“業界標準”となったケースもある。
保険業界でも、顧客向けの相談窓口は各社とも設置済みだった。だが、金融庁が利用者保護路線を本格化した昨年度以降、生損保の保険金不払い問題は、件数の差こそあれ各社で発覚。不払いは業界共通の問題となっており、顧客の声は生かしきれていない。
消費者グループ「金融オンブズネット」の原早苗コーディネーターは、保険料率自由化など、競争激化をもたらした金融自由化の影響を指摘する。「かつては規制に守られた護送船団で、保険業界は監督官庁を見ていればよかったが、自由化で消費者に顔を向けなくてはいけなくなった」と分析し、契約者重視の考えが浸透していなかったとみる。
その上で「消費者の声を生かすシステムに完ぺきな答えはなく、試行錯誤が必要だ」と強調。保険業界の課題として、販売現場を含めた情報管理の徹底が不可欠とする。
国民生活センター相談調査部の青木正典主査は「これからは商品性の違いだけでなく、顧客対応で差がつく。苦情を次の苦情防止に役立てる取り組みに向け、(一連の不祥事は)保険業界が一歩を踏み出す機会になった」と話している。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060818/mng_____kakushin000.shtml