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[郵政民営化]「業務拡大より大事なことがある」
官業のムダを排し、業務の効率化を図るという郵政民営化本来の目的よりも、新規業務への意欲ばかりが目立つ。
来年10月の民営化スタートへ向けて、持ち株会社となる日本郵政会社が事業計画をまとめた。
傘下の4事業会社のうち、郵便貯金、簡易保険をそれぞれ引き継ぐ「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」の金融2社を中心に、業務拡大項目が並んだ。
ゆうちょ銀は、住宅ローンや中小企業向け融資など、かんぽ生保は、医療・傷害保険などへの参入を目指す。預金や保険金の限度額について、廃止や引き上げの希望も掲げた。
ゆうちょ銀の総資産は金融機関として世界最大、かんぽ生保も業界で国内最大となる。それが既存の民間金融機関並みに事業を展開すれば、名実ともに超メガバンクと巨大生保が誕生する。
民間会社として経営が成り立っていくためには、収益源の確保が必要だ。郵貯や簡保が集めた膨大なお金は、国債の購入や財政投融資の資金として、官の枠内で非効率に使われていた。資金を民間に還流させて経済を活性化させるには、運用の選択肢を広げた方がいい。
だが、それがすべて認められるのは、完全に民営化してからの話だろう。
計画では、金融2社の株式は2011年に上場する。その後5年間で日本郵政が持ち株を手放すが、それまでは政府の関与が残る。
国を後ろ盾にして資金を集め、顧客を獲得するのでは、民間金融機関と公平に競争することにはならない。公的金融の縮小という、民営化の趣旨にももとる。新規業務の是非を審査する政府の郵政民営化委員会は、移行期の業務拡大について、厳しくチェックすべきだ。
一方で計画は、全国一律料金で配達する郵便のユニバーサル・サービスをどう維持していくのかなどには、明確な青写真を示していない。国民利便の面からは金融業務の拡大より、重要な点だ。
現在の日本郵政公社が取り組んでいるムダな支出の見直しも、道半ばだ。
特定郵便局長の俸給や人事制度の見直し、特定局と普通郵便局との業務連絡系統の一本化などの改革プランには、既得権を奪われる特定局側の抵抗が強い。
郵便料金の不正値引き、職員による横領事件など、不祥事も続発している。グループ全体でコスト意識や法令順守意識を高めていかなければ、一人前の民間会社にはなれない。
民営化を成功させるには、業務拡大を急ぐより先に、やらねばならないことが数多くある。