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2006年07月31日(月) 00時00分

多重債務の悪循環 金利増殖 あえぐ生活  東京新聞

 利子が膨らみ、利子返済のために新たな借金を繰り返す。法外な金利、悪質な取り立ても横行する多重債務の問題。「安易に借りない」「困ったらすぐに相談」。よく言われる注意事項だが、きちんと守られていないのが現状という。多重債務の問題を探った。 (平木友見子)

 県消費者センターなど県内の各相談機関に寄せられた消費者金融などに関する相談件数は昨年度、四千三百三十二件を数えた。このうち、多重債務についての相談は約半数の二千二百三十一件に上った。

 今年四月には県内で悪質な取り立てなどに関する電話相談も行われ、多くの人が相談した。中には「会社まで取り立ての電話が及び、退職を余儀なくされた」という声もあった。

 一般に、生活に困った場合は、社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度や「最後の安全網」といわれる生活保護が利用できる。しかし、同制度には連帯保証人が必要だったり、生活保護には不正受給を防ぐため支給要件が厳しいことなどもあり、金策のために消費者金融へ駆け込む人が少なくないという。

 「借金は個人の問題。納税者のことを考えると福祉制度で救うのは甘い」「多重債務の相談者には早期債務整理の助言や弁護士会の紹介などはするが、それ以上は踏み込めない」。県の福祉関係者からはそんな声も漏れる。

 多重債務の問題に取り組んでいる拝師徳彦弁護士は「小口の借金が利子で膨らみ、多重債務に陥る人は多い。身動きが取れなくなってようやく相談に来る」と現状を憂い、早めに相談するようあらためて呼び掛ける。また、「消費者金融の高金利貸し付けや押し貸し防止とともに、低所得者層を把握している行政の早い段階での受け皿や相談窓口設置などの対応も必要」と指摘している。

■最初は数万円が…利子と酒量だけが増えた 

 安易な借金で多重債務者に−。千葉市の四十代後半の男性は、会社の退職金を充てても借金の返済ができず、昨年四月、千葉地裁に申し立てていた破産手続きの免責決定を受けた。免責されたのは消費者金融など七社からの借入金約三百七十万円。「最初は数万円の借り入れだったが、金銭感覚がまひし、金利を払うために借り先が増えていった」と振り返る。

 借金のきっかけは二〇〇〇年、父親にがんが見つかり余命宣告されたこと。「最期においしいものを食べさせてあげよう」「旅行に連れて行こう」。軽い気持ちで金を借りた。だが、父の死後三年間に、糖尿病で入退院を繰り返していた母親と病気の妻が相次いで死亡。男性は失意の中、自らもアルコール依存症とうつ病になり、会社を辞めた。

 家族の当面の医療費、生活費、酒代など小口の借金の利子はみるみる膨れ上がった。「父親の残した持ち家があるから」と生活保護は断られ、借金の取り立てから逃げるために公園の水で腹を満たし車中生活も。平常心は失われ、すがった悪徳金融会社にはだまされて、悪循環にはまっていったという。

 「どこに相談していいか分からず、利子と酒量だけが増えた」という男性だが、知人の紹介で一昨年五月、弁護士に相談した。弁護士とともに市や地裁に行き、生活保護の受給資格と免責決定を得て、現在は以前勤めた会社などで昼夜パート勤務をしながら、知人に借金を返済している。

◆消費者金融などに関する相談窓口

県弁護士会=電043(227)8431

千葉司法書士会=電043(246)2666

県県民生活課=電043(223)2795

県消費者センター=電047(434)0999


http://www.tokyo-np.co.jp/00/cba/20060731/lcl_____cba_____000.shtml