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不動産の情報源で便利なのは?信頼できるのは?
住宅ローン金利にも先高感が広がり、新築マンションの登録窓口は「今のうちに」という来場者でにぎわう=22日午後、川崎市内で
野村不動産の新築物件。きっかけは同社から届いた一斉メール。会員登録してほどなく、「契約済み物件でキャンセルが出ました」という着信に反応した。
■購入の契機、4割ネット
野村は販売だけでなく、広告面でもネットに前のめりだ。「同業の身ですが、お宅の広告をうちで担当させてください」。野村が設立したネット広告会社の新規開拓部隊が今月から同業他社を回り始め、業界を驚かせている。
広告ノウハウのない新規参入組や中小・中堅のマンション業者を回り、受注も数件確保した。住宅関連の広告市場は約2800億円。ネットはまだ1割だが、野村は「2〜3割になるのは時間の問題」と強気だ。
野村を変えたのは、新築物件の売れ方の変化だ。年4000〜5000戸のマンションを供給するが、購入のきっかけの4割が広告やホームページ(HP)などネット。4〜5年前まで大勢を占めた新聞折り込みやダイレクトメールは、ともに2割に後退した。
三井不動産など3社が21日から抽選会登録を始めた川崎市・武蔵小杉の超高層マンション。2棟のうち1棟は地上59階の日本最高層だ。ネット上のブログで話題にされていることもあり、3社は新聞の全面広告を見送った。
ネットが住まい選びを激変させたのは、情報が新鮮で物件の比較が簡単だからだ。そして不動産価格そのものも、ネットオークション(競売)の台頭で変わりつつある。
■価格決定権、買い手側に
個人から見ると、不動産価格の決定はずっと業者ら売り手優位だった。ところが、ネット競売では、価格決定権が買い手に移る。
千葉県の市川市役所は、検索サイト大手ヤフーのネット競売に税滞納者から差し押さえた不動産を出品している。今月に約571万円で落札された土地は、昨年までは780万円だった。3割近く値下げして売れた。
ネット競売の需要と供給を両方掘り起こして急成長する企業も現れている。投資家向けに国内最大という不動産ネット競売システムを運営するアイディーユー(大阪)。05年8月期の年間出品数は、自社仕入れ・転売案件も含め、1885件(最低売却金額の総額430億円)、成約件数は68%の1291件、落札額の総額は294億円。
年間落札件数はこの2年で28倍に拡大した。数百万円のワンルームからファンドなど投資家が対象の50億円規模のビルの一棟売りに至るまで多様な取引需要に対応する。物件獲得などのため、5月に大和ハウス工業と業務提携。今月に入り、仲介・管理大手のアパマンショップネットワークと準加盟店契約を結んだ。
■便利さの陰で違反広告、おとり物件を掲載
だが、ネット取引の拡大と裏腹に、陰の部分も見過ごせなくなっている。広告では、違反の増加が止まらない。全国の各ブロックに、不動産広告を監視する不動産公正取引協議会(公取協)があり、その規約が広告の適否基準になっている。関東甲信越をカバーする首都圏公取協では、規約違反で処分したネット広告が01年度の1件から、04年度は8件、05年度は24件になった。
典型的な手口が「おとり広告」。ネット上に実在しない架空の物件をわざと掲載し、連絡してきた人に「売り切れました」と告げ、広告とは別の物件を勧める。同じ違反を繰り返す業者が後を絶たない。
不動産広告ならネット、新聞、ダイレクトメールなどを問わず、物件の価値が下がるような「ネガティブ情報」もきちんと表示する「現況優先」が義務づけられる。
ところが、完成予想図から日陰になる周辺の建物や騒音の原因になる道路などが省略される広告が横行。中には「堂々と『現況と異なります』と断り書きを入れる例もある」(首都圏公取協の佐藤友宏調査役)。違反の処分も初回なら50万円の違約金で済むうえ、人手不足の公取協では目が届かず、「違反はやり得という空気もある」と業界関係者はいう。
新築マンションの値段は、開発業者が土地代と建物の建設費、広告宣伝費や人件費などの経費に利潤を加える形で決めてきた。この枠組みを守りたい業者側は、他の物件と比べにくくするため、値段を抽選会直前まで伏せる傾向も根強い。
ネット利用者へのアンケートでも、ネット情報の利便性は多くが認めるものの、信頼性はぐっと低い。国土交通省や業界は「焦りは禁物。人生で最も高い買い物なのだから、最後は自己責任で」と買い手に呼びかけている。