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インターネットの入り口となるポータルサイト事業で、巨人ヤフーに挑む“伏兵”が現れた。ネット調査会社ネットレイティングスが発表した5月のサイト閲覧件数ランキング(家庭ユーザー)で、情報技術(IT)ベンチャーのミクシィがシェア(占有率)2・5%で、3位に食い込んだ。
ヤフー(25・4%)には遠く及ばないが、楽天(3・0%)の背中が見える。4位グーグル(1・2%)の2倍以上の閲覧件数だ。
ミクシィは、ネット上で日記や個人情報などを特定の仲間に限って公開できる「ソーシャル・ネットワーキング・サービス」(SNS)の最大手。04年2月に日本でいち早くSNSの運営を始め、利用者数は今月に入って500万人を超えた。今や、SNSの代名詞となり、広告収入を奪われかねない大手ネット企業に脅威を与えている。
追われる立場のヤフーもついに動いた。今月から有料会員向けに、SNS「Yahoo!360度」の運営を始める。「SNSを運営すれば、新たに有料会員の獲得や、閲覧件数の増加による広告収入の拡大が見込める」のが狙いだ。
目まぐるしく勝者が入れ替わるネットビジネスは、下克上の世界だ。通常の小売業の方程式は通じない。
楽天の「楽天市場」で、半導体の製造工程で使う1台10万円前後の業務用真空ポンプが、毎月200万円も売れている。
本来は半導体関連などの業者しか使わないはずの産業用ポンプだ。しかし、ネット上に陳列されたことで多くの人の目に触れ、作業過程で真空状態が必要なプラモデルやフィギュアなどの樹脂製模型を製作する業者や個人のマニアといった、思わぬ需要が開拓された。
ポンプを製造するアルバック機工(横浜市)は「ネットで販売して初めて模型作りの使い道があると知った。新しい用途を見つけてくれ、うれしい」と喜ぶ。
ネット販売は、実際の店舗には並べきれない多様な商品を、スペースを気にせず陳列できるのが武器だ。
総務省の06年度情報通信白書は、売れ筋でない商品「ロングテール」の売り上げは、一般の店舗販売なら全体の2割程度にとどまるが、米国アマゾンのネット書籍販売では、3分の1に達すると分析している。
「赤ちゃんがいる部屋で安心して使える空気清浄機を探しています」
「それなら、いい製品を知っています……」
小売店で販売されている商品の価格を比較できるサイトを運営するカカクコムの掲示板で、利用者の「口コミ情報」が飛び交う。
欲しい商品の希望や条件を書き込むと、使ったことのある人などが、経験をもとにアドバイスする。消費者のホンネがわかると人気を集め、閲覧は05年度だけで5億6800万件、書き込みも00年3月からの累計で520万件を超えた。
アルバック機工の真空ポンプの人気が出たのも、さまざまな掲示板に寄せられた口コミがきっかけだ。みずほコーポレート銀行産業調査部の佐藤勇一調査役は「ネットでは相互に情報が結び付き、消費への影響は大きくなる。企業は広告だけでなく市場分析や商品開発などに結びつけるようになっている」と話す。
ネットの情報が新たな消費の潮流を作り、企業の戦略を揺さぶる。口コミをどう生かして成長していくのか、ネットビジネスは新たな戦い方を迫っている。(河野越男)
ロングテール 商品の販売数をグラフに描くと、販売数の多い部分が恐竜の頭から胴体に見え、少ない部分が長い尾(テール)に見えることから名付けられた。通常の店舗販売など「伝統的市場」では販売数上位20%の商品で売上高全体の80%を占めるとされる。アマゾンの書籍販売をはじめネットビジネスでは、ロングテールの売上高の比率が高くなる傾向があることから、重要性が注目を集めている。