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「そんなばかなと思った」。五十代女性は憤りで声を震わせる。
女性は今年一月、五百十万円を、八年満期で金利は1・0%という満期特約付き定期に預けた。行員からは「中途解約はできない商品です。どうしても解約する場合には損害金が発生し、元本割れの可能性があります」と預入時に告げられた。女性は、損害金がどれくらいになるかを、その場で行員に聞いたが、具体的な回答はなかった。女性は「きっと数万円のレベルだ」と思いこんだ。
その後、同じ銀行が新しい預金を出した。今度は、八年満期で1・6%の利率。その差は、0・6%。満期時には二十万円近く利息(税引き後)で差がついてしまう。女性は預け替えようと、銀行に行った。行員は「解約すれば三十五万円余りの損害金が発生する」と伝えた。「そんなに損をするなら、もっと解約が自由にできる預金にすればよかった」と、女性は後悔する。
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「このケースは、このタイプの預金の問題点が凝縮されている」と、南山大学経済学部の吉本佳生助教授は指摘する。
まず、預入時に「高い」と感じた金利が、その後、そうでなくなる可能性だ。預金金利は、日銀の量的緩和やゼロ金利の解除で、すでに上昇傾向。順調な経済を背景に、日銀が、さらに公定歩合を上げれば、預金金利も高くなる。過去の公定歩合の推移(表)をみると、現在の金利水準がいかに低いかが分かる。
満期が銀行によって決められるのも、預金者に不利な要素だろう。例えば「年1・5%の金利で当初満期は三年間。三年経過後、満期三年延長の可能性あり」という預金があるとする。三年後に預金金利3%が当たり前の水準になっていれば、金融機関は、満期を伸ばした方が、有利な運用ができる。逆に預金者は、世間より低い金利を甘んじて受けることになる。
吉本助教授は「客がもう少し預けたいと思う状況では満期延長されず、他にもっと金利の高い商品がいくらでもあるから払い戻してほしいという状況では払い戻しもできなくなる」と指摘する。
預金から数年後を境に、徐々に金利が上がる「ステップアップ型」の商品もあるが、この場合でも同様のリスクは残る。
二つ目は解約手数料の高さと不透明さ。一般的にこの種の預金の解約手数料は、預入時より金利が上がるほど、また、満期までの期間が長いほど、高くなる。
しかし、窓口で具体的に金額を示す金融機関はない。預金の運用は複雑なため、損害金の額を正確に示すのは困難だからだ。「概算では、その数字がお客さまの頭に残ってしまい、実際の金額と違った場合のトラブルのもとになる」(金融機関)。
ネット銀行のイーバンク銀行が「十年定期を一年で解約する場合、市場金利が預入時と同じなら元本額の約2%と諸経費、1%上昇していれば、さらに元本額の9%(1%×九年)が加わる」と説明する程度だ。
中途解約で預金者が損失を被る可能性が高いという商品の性質から、この種の預金を扱う金融機関も「病気などでも、途中で引き出す可能性がない余裕資金だけを預けてください」と客に注意を促している。加えて、経済に日ごろから関心を持っておくことも、有利な金融商品選びに欠かせない要素といえそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20060727/ftu_____kur_____000.shtml